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森永康平の経済闘論 トランプ政権が日米経済に与える影響 掲げる政策が米国のインフレ圧力に…消費が冷え込む日本に利上げの逆風が

zakzak by夕刊フジ 2025年1月23日 11時0分

ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任した。トランプ政権が実行する経済政策が米国経済や日本経済に与える影響を考えてみると不安要素が多い。

既に中国だけでなく、自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を結んでいるメキシコやカナダにも関税をかけるとしている。仮にトランプ政権が貿易赤字の削減を念頭に置いているのであれば、米国における国別貿易赤字額の上位5位に入っている日本もいずれは対象となる可能性は高い。

足元の米国経済を見てみると、一時期に比べればインフレは落ち着いているものの、利下げを正当化できる水準にはない。米商務省が発表した11月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比2・4%のプラスと2カ月連続で伸び率が加速している。エネルギーと食品を除くコア指数の伸び率は同2・8%となっており、依然として目標とする2%には程遠い。

昨年9月から米国が利下げ局面に入った理由の1つに軟調になってきた労働市場が挙げられるが、米労働省が発表した12月の雇用統計をみてみると失業率は4・1%と前月から0・1ポイント低下しており、2023年春頃から継続していた上昇傾向は頭打ちしたように見える。非農業部門の就業者数も前月比で増加を維持しており、堅調な状況を保っていると考えてよいだろう。

トランプ氏が従来から掲げている移民抑制、減税政策、関税政策はいずれも米国国内のインフレ圧力となるため、市場が織り込んでいるよりも早い段階で利下げ局面が終わることも考えられ、場合によっては再び利上げ局面に突入する可能性も否めない。

そうなれば日米の金利差が広がり、円安は進行することになるだろう。円安が進行すると、日銀が継続的に利上げをする可能性が高まってくる。もちろん、日銀は円安を阻止するために利上げをするなどとは一言も言ってはいないが、消費が弱含んでいるなかで利上げをした日銀が円安を気にして利上げを決定したと考えることはそれほど違和感はない。自身のSNSでドル高(円安)に対する不満を何度も書き込んでいたトランプ氏は日銀の利上げに対しては何も言わないはずだ。

トランプ政権誕生の2025年は実質賃金が長期にわたり伸び悩み、消費が冷え込んでいる日本経済に利上げという逆風が吹き続ける展開をもたらすかもしれない。

■森永康平(もりなが・こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。

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