ドナルド・トランプ次期米大統領は7日、フランス・パリの大統領府(エリゼ宮)で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と大統領選当選後、初の会談に臨んだ。ロシアの侵略を受けているウクライナ支援に消極的とされるトランプ氏だが、一方でロシアの弱体化についても指摘している。「早期停戦」に向けたトランプ氏の戦略を専門家が読み解いた。
石破茂首相が11月、トランプ氏と面会できなかったことについて、日本政府関係者は「外国首脳との面会を一律で断っている」と説明したが、実際にはトランプ氏は〝外遊〟まで始めている。
会談はフランスのエマニュエル・マクロン大統領をホストとして3者で対面した。ゼレンスキー氏は冒頭、トランプ氏に歩み寄って握手を交わした。ウクライナの戦況を協議し、早期の戦争終結に向けて取り組むことで一致した。
会談後、ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)に「われわれ全員が、この戦争をできるだけ早く、公正な形で終わらせたいと望んでいる」と投稿した。
トランプ氏の政権移行チームは、「ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を最低20年間禁止」「米国はロシア軍の再侵攻を抑止する軍事力を提供」「停戦ラインに非武装地帯を設け軍事監視団を派遣する」などの和平案を作成したとされる。
ゼレンスキー氏は英スカイニュースのインタビューで「戦争の激化を止めたいのであれば、われわれが管理しているウクライナの領土をNATO傘下に置く必要がある」と発言した。ウクライナへの軍事支援の停止や、頭越しに対露交渉が進むことへの警戒感もある。
トランプ氏はSNSでロシアを「弱体化している」と指摘し、ウラジーミル・プーチン大統領に「行動を起こすべきときだ」と呼びかけた。
今後の展開をどう読むか。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「早期終戦で一致したのは間違いないだろう。トランプ氏も最近はウクライナ支援に消極的な姿勢を見せていない印象で、『和平の立役者』を狙っているのかもしれない。NATOが教育訓練や、兵站支援などで実質的に、ウクライナを〝傘下〟に入れる落としどころもありうる。ロシアは経済状況の悪化やシリア政権の崩壊をみても世界戦略が破綻している。プーチン氏の〝落ち目〟が狙われるだろう」と語った。