知事失職に伴う兵庫県知事選は17日投開票の結果、無所属の前職、斎藤元彦氏(47)が、元尼崎市長の稲村和美氏(52)、日本維新の会を離党した前参院議員の清水貴之氏(50)ら無所属6新人を破り再選を果たした。SNSを駆使した戦略で支持を集め、再び県民の負託を得た斎藤氏だが、パワハラなどの疑惑告発文書問題をめぐる県議会の調査特別委員会(百条委員会)や弁護士で作る第三者委員会による調査は続いている。全会一致で不信任を可決した議会側の対応も注目される。
18日午後9時半過ぎ、神戸市内の斎藤氏の選挙事務所前は二重三重に人の輪ができ、斎藤氏が姿を見せると一斉にスマートフォンを掲げた。
斎藤氏は「SNSは好きではなかったが、今回はSNSを通じていろんな広がりがあり、自分のことを見ていただいている方がこんなにいるんだと、プラスの面を感じた」と話した。
SNSでは「既得権益と戦う改革者」という姿が浸透し、文書問題での「パワハラ」「おねだり」など負のイメージを覆した。
失職直後の9月末時点で約7万人だった斎藤氏のX(旧ツイッター)のフォロワーは、選挙期間中も急速に拡大し、18日時点で20万人超に達していた。SNSで一定の影響力を持つ「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が、斎藤氏の当選を目的に異例の立候補をしたことも後押しになったとみられる。
先行していたとみられていた稲村氏は、政党や団体が支援する従来型の選挙戦を展開した。選挙戦終盤には県内22市長が稲村氏の支持を表明したが、市長の1人が机を叩く様子の動画が拡散されて炎上する場面もあった。
兵庫県選挙管理委員会によると、17日投開票の県知事選の投票率は55・65%だった。前回2021年の投票率41・10%を14・55ポイント上回った。
政治ジャーナリストの安積明子氏は「『斎藤氏擁護』か『反斎藤氏』かが争点となり、SNSで勢いがある斎藤氏が有利に運んだ。稲村氏側の選挙戦が弱かったのも背景にあるだろう」と分析する。
県議会は18日午後に百条委を開く。25日に問題を巡る総括的な尋問を関係者に行う予定で、対象を誰にするかや今後の進行を協議する。斎藤氏への尋問も今後再開される見通しだ。
斎藤氏と議会の対立の行方について安積氏は、「議会側は斎藤氏が勝利した以上、再度不信任決議案を提出するのも難しい。一方、斎藤氏が議会を解散する方法もあるが、巨額の資金を投じて立て続けに選挙を実施する決断は難しいだろう。今後は、百条委の証拠提出などによる進展や、来年3月の第三者委の報告の内容で疑惑が再燃するかが鍵を握るだろう」と語った。