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日本の解き方 トランプ氏のリードは変わらず 賭け市場にも表れたバイデン氏大統領選撤退の波紋 空白期間の「台湾有事」にも備えを

zakzak by夕刊フジ 2024年7月27日 10時0分

米民主党のジョー・バイデン大統領が21日午後(日本時間22日未明)、大統領選から撤退した。投開票日まで残り4カ月を切るタイミングでの候補者交代は異例だ。

今回の撤退は、6月27日夜(同28日午前)、ジョージア州アトランタで行われたバイデン氏と共和党のドナルド・トランプ前大統領によるテレビ討論会にさかのぼる。

ライブ中継していたNHKの解説では「五分五分」という評価をしていたが、バイデン氏の高齢による衰えは誰の目にも明らかだった。案の定、この討論会を放映した民主党びいきのCNNですら、世論調査で視聴者の67%が「トランプ氏勝利」と回答したと伝えた。

これに追い打ちをかけたのは、トランプ氏の暗殺未遂事件だ。7月13日夕(同14日朝)、トランプ氏がペンシルベニア州バトラーの集会で銃撃され負傷した。銃撃の直前にたまたま頭をひねったので後頭部の直撃を回避し、耳を損傷したという、急死に一生を得た形だった。「弱々しいバイデン氏」と「強いトランプ氏」の好対照は決定的となった。

こうした経緯でバイデン氏は撤退した。筆者は、撤退表明の2日前には、「ベッティング(賭け)市場」のデータからバイデン氏の撤退を予測していた。民主党擁護派のコメンテーターは「有名ではない議員が撤退を支持しているのであまり関係がない」と言っていたが、希望的観測より、身銭を切っている賭け市場の方がよく当たる。

戦後の米大統領選において、現職大統領が再選出馬を断念するのは1952年のハリー・トルーマン氏(民主党)と68年のリンドン・ジョンソン氏(同)の例がある。ただし、それぞれ表明時期は投票の9カ月前と7カ月前という選挙戦の初期段階だったが、民主党内は混迷し、いずれも共和党のドワイト・アイゼンハワー氏とリチャード・ニクソン氏に敗北した。

バイデン氏が撤退しても民主党が逆転する勢いがないことは、賭け市場でのオッズに表れている。6月の討論会以降、トランプ氏の当選確率は60%以上をキープしており、これは相手がバイデン氏であっても誰であっても変わりはない。

今回、バイデン氏は撤退にあたり、カマラ・ハリス副大統領を後継者とした。賭け市場でトランプ氏の当選確率は64%、ハリス氏は32%とダブルスコアの差だ。

日本は9月に自民党総裁選を控えている。「安倍晋三元首相のようにトランプ氏と伍(ご)していける政治家は誰か」という視点から次期総裁選びが行われるべきだ。その場合、高市早苗経済安保相が、俄然(がぜん)有力になってくるのではないか。

ただし、トランプ氏が大統領になるとしても来年1月以降だ。トランプ氏は、ウクライナ戦争を終わりにするかもしれないが、それまで米政権がレームダック(死に体)化しているときに「台湾有事」が起こる可能性はゼロとはいえず、そのリスクにも備えなければいけない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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