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ぴいぷる 歌手・森山良子「どんどん最強の私に近づいていく感じ」 NYでジャズ武者修行「最高のレッスン」 来年1月、大江千里とジャズライブ

zakzak by夕刊フジ 2024年12月20日 6時30分

自由に歌うことに羨望 フォークの女王に抵抗

アルバムの1曲目から「私は、もりやまぁ~りょ~お~こ!」ときたものだから度肝を抜かれてしまう。だが、これぞ、まさに自由自在なジャズの面白さだ。

ジャズピアニストの大江千里のプロデュースで生まれた新アルバム「Life Is Beautiful」(ソニー)の「MORIYAMA」。曲名で分かるように、自己紹介ソングだが、デビューから55年以上たって〝あらためまして〟といった感じだ。

「そう、今までなかった感じですよね。まさにせんちゃん(大江千里)らしい曲なのかな」

そのせんちゃんについて聞くと、「すべてのキャリアを捨ててアメリカに渡って、その勇気や潔さ、自分の夢をかなえようとする強さに感動したんです。私なんか、20歳のころからジャズを勉強しにアメリカに行きたいって思っていたのに、恋愛したり、結婚したり、子供産んだり。結局、そんなことを言い訳にして、機会を逸してしまったから」と切り出した。

「後になれば、そんなのほっておいて行けばよかったのに…なんて思うけど。ちょっと言い訳がましくなるけれど、私の中ではやっぱり行けない理由が多くて。だからせんちゃんには畏敬の念といいますか、すごいなって思うんです」

自由な姿への羨望。そこには、デビュー時から〝フォークの女王〟といわれてきた自身への思いが重なってくる。

「大学時代から先輩や友人に勧められてフォークを歌っていたけど、プロになるならジャズシンガーに転向しようと思っていたんです。でもフォークへの私のニーズがあまりにも高くて、それを覆すのは難しすぎて。〝フォークの女王〟とは言ってほしくないっていう抵抗感でいっぱいでしたね。とはいえ、そういう時代だったし、私自身そうじゃないって思いながらも受け入れざるを得なかったし、それが恵まれた環境だってことは分かっていますけどね」

NYジャズ武者修行 最高の歌唱レッスン

大江との交流を深めていく中で、大江から「ジャズアルバムを一緒に作りませんか」とうれしいオファーを受けた。そして、アメリカでジャズを学ぶことを提案された。

今なら行かないわけがない。新たな挑戦が始まった。ニューヨークにわたって、ボーカルレッスンを受けることになったのだ。2週間ほど渡米してはレッスンを受ける生活を3、4回繰り返した。そこで出会ったものは、「私が幼いころからジャズだと思っていたものは、ニューヨークではとても古いジャズだってことでした」。

どういうことだろう。

「今のジャズシンガーはフェイクしたりせずに淡々と歌うんだって。〝R〟の発音だって、そんなに舌を巻かないのよって教えられて。なんかもう全部初めてのことで。これだけ歌ってきたのに、知らないことがたくさんあるの。やっぱり、さすがニューヨーク。進化しているの。ジャズってどこか古典って思っていたけど、そうじゃなかったわ」

ニューヨークでの生活は、自身にも進化をもたらした。

「呼吸の仕方で、声帯が疲れない歌い方を身に付けたんです。新しい歌い方にたどり着いちゃった。皆さんが気づくかどうかは別として、自分にとって初めての唱法を習ったことが挑戦だったな。この年齢の私にとっては実りの多い日々でしたし、最高のボーカルレッスンでした。新しい森山良子が生まれました」

そして来年1月には大江とともにジャズライブにも挑む。

「ピアノ1本でオールジャズ。私の過去の曲もジャズフィーリングでやってみようかと。いつもとは違うちょっと大人でセンシティブな森山良子を聴いていただけるでしょう。この年にして夢がかなうなんて、どんどん最強の私に近づいていく感じね」

(ペン・福田哲士 カメラ・鴨川一也)

■森山良子(もりやま・りょうこ) 歌手。1948年1月18日生まれ、76歳。東京都出身。67年、「この広い野原いっぱい」でデビュー。ミリオンセラー「禁じられた恋」をはじめ「涙そうそう」「さとうきび畑」「あなたが好きで」などヒット曲多数。2002年には、日本レコード大賞で最優秀歌唱賞、金賞(さとうきび畑)、作詩賞(涙そうそう)と3冠を達成。18年、紫綬褒章を受章した。

大江千里プロデュースのオリジナルジャズアルバム「Life Is Beautiful」が発売中。2025年1月16日に東京・ブルーノート東京でジャズライブ「RYOKO MORIYAMA with SENRI OE TRIO」を開催。ブルーノート東京(03・5485・0088)。

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