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経営者目線 ワタミが「焼肉&すし食べ放題」に参入した背景 電気代補助金は経済学に反する

zakzak by夕刊フジ 2024年7月17日 15時30分

ワタミが展開する薩摩牛食べ放題の焼肉店「かみむら牧場」で、おすしも食べ放題にした。グループ内の専門店「すしの和」のノウハウを投入し、ネタ、しゃり、握り方にもこだわった。せっかくの家族の外食の機会に、値段を気にせず、焼肉とおすし両方とも、おなかいっぱい楽しんでもらいたい。

背景には、岸田文雄首相が掲げる「経済の好循環」が全く起きていないことがある。郊外のロードサイドの飲食店は軒並み苦戦しており、家族での外食の回数は減っている。回数が減っている以上、より選ばれる「差別化」が求められている。実質賃金が上がっていない中、今後、金利が上がっていけば日本経済は失速する可能性が大きい。金利上昇で住宅ローンの支払い負担が増えれば、家計はより「守り」に入るだろう。

先週に引き続き、元モルガン銀行東京支店長で、参院議員の藤巻健史さんとニッポン放送で対談した。岸田首相が打ち出してきた「電気代補助金」は、経済学に反していると批判する。

「電気代を抑えるのは需要を増やすということだ。インフレを加速させる。(暑さに弱い)高齢者は守らないといけないが、健康な人は1~2度を上げるような節電はできる。インフレ、デフレの原因は需給なので、調整するのは価格だ」と経済学の基本を説く。

インフレを抑えようと日銀がブレーキを踏んでいるとき、政府がインフレのアクセルを踏むのは、チグハグすぎる。補助金は岸田首相の、総裁選前の人気取りとしか感じない。

藤巻さんは、今の日本は社会主義の計画経済だと指摘する。その上で、「日本は格差是正を金科玉条にし過ぎた」という。私もかつて崩壊前の旧ソ連を旅し、社会主義はダメだと痛感した。いっさいサービスをしないレストラン店員を多くみた。社会主義では給与格差がなく、働かないほどいいし、お客さんは来ない方がいいということになりかねない。当然、経済発展もなく、努力のインセンティブもなくなる。

日本も首相が、原資もないのに賃上げしろと中小企業にまで迫ったり、定額減税の額を給与明細に記載しろとまでいう。自由主義経済とは思えないことが、目立つようになってきた。経済成長しなければ賃上げは、すぐに限界を迎える。給与明細に減税額を記載しても消費は伸びない。人口が減る中で、経済成長をしていく国の根幹的な思想が問われている。

米国人は老後の生活を守るために複数の職に就いている。グーグルやアップルなどの米巨大IT企業「GAFA(ガーファ)」のトップには移民やその子孫が多く米国には「アメリカン・ドリーム」がある。努力のインセンティブが機能している。

電気代補助金だけでは未来は明るくならない。がんばった人、成功した人が称賛される「ジャパニーズ・ドリーム」の社会こそが、日本の未来を明るく照らすと考える。 (ワタミ代表取締役会長兼社長CEO・渡邉美樹)

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