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自民党新総裁への期待と直言 激動の国際情勢「第三次世界大戦」の危機 実現困難な課題より安保3文書の改定急げ 求められる平和と安全守る「有事の宰相」

zakzak by夕刊フジ 2024年10月9日 11時0分

元陸上自衛隊中部方面総監、山下裕貴氏

厳しさ増す周辺環境

現在の国際情勢は、ウクライナ戦争やパレスチナ・イスラエル戦争など、第三次世界大戦への危機をはらみながら激動している。このような情勢下、石破茂氏が1日、第102代首相に就任した。

自民党総裁選で、石破首相は「第1に日本を守る」「東アジアにNATO(北大西洋条約機構)のような仕組みをつくる」。また、防衛力整備と防衛費増額も必要であり、「安全保障基本法」で防衛力整備のあり方、自衛官の処遇、国や自治体の責務を規定すると述べていた。

総裁選を勝つための方便であっては困る。

日本周辺の安全保障環境も日々厳しさを増している。8月26日には、中国軍の情報収集機が長崎県・男女群島沖で領空を侵犯し、5日後には、鹿児島県・屋久島周辺の領海に中国海軍の測量艦1隻が侵入した。9月18日には、中国海軍の空母「遼寧」が沖縄県・与那国島と西表島の間を初めて通過し、日本の接続水域に一時的に入った。

今回の動きは、あからさまな軍事的恫喝(どうかつ)である。

中国は太平洋や東シナ海などにおける「力の空白」を見逃さない。米大統領選や自民党総裁選という、日米両国が大きな動きができない時期を見計らって意図的に行動している。

9月23日には、ロシアの軍用機が日本領空を3度侵犯した。このような情勢の深刻化は、2022年に策定された安保3文書の前提から大きく変化している。石破首相には、アジア版NATOなど、すぐには実現困難な課題より、安保3文書の改定を急いでもらいたい。

首相は、陸海空自衛隊の最高指揮官であることを忘れてはならない。防衛相は行政府の長として自衛隊の隊務を統括するが、首相は内閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を有している。

実力組織である自衛隊を動かすには、卓越した統率力が必要である。石破首相は人と群れない政治家といわれるが、自衛隊は人が中心であり人の集合体である。自衛官たちの信頼を得るためには、全身全霊で最高指揮官としての責務に取り組むことが必要である。

「日本有事」の際、政府内で喧々囂々(けんけんごうごう)の議論をしている時間的余裕はない。石破首相には自衛隊の最高指揮官として速やかに決断し、自衛隊に出動を命じてもらいたい。石破首相に求められているのは、日本の平和と安全を守る「有事の宰相」としての姿である。 =おわり

■山下裕貴(やました・ひろたか) 1956年、宮崎県生まれ。79年、陸上自衛隊入隊。自衛隊沖縄地方協力本部長、東部方面総監部幕僚長、第三師団長、陸上幕僚副長、中部方面総監などの要職を歴任。特殊作戦群の創設にも関わる。2015年、陸将で退官。現在、千葉科学大学客員教授。新聞やテレビ、インターネット番組などで安全保障について解説している。著書に『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』(写真、講談社+α新書)、『オペレーション雷撃』(文藝春秋)。

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