3党税制協議
石破茂首相は29日の臨時国会で所信表明に臨み、「年収103万円の壁」の引き上げについて議論することを明言する。自民、公明、国民民主の3党協議では、国民民主党が「178万円」への〝満額回答〟を求めたのに対し、与党側は財源確保の手段として「歳出削減」や「増税」を突き付けた。「防衛増税」や「退職金課税」なども相次いで浮上している。
国民民主党は28日、所得税の非課税枠を「178万円」に拡大するよう求める独自の法案を提出した。
だが、3党の税制調査会幹部による協議では、与党側が「年収の壁」引き上げの財源確保の手段として「歳出削減」や「経済効果による税収増」「家計の負担とならない増税」の3案を示した。
自民党税調の後藤茂之小委員長は「経済効果による税収は恒久財源ではないと指摘した」と明かしており、歳出削減と増税が事実上の選択肢とみられる。
渡瀬裕哉氏「財源論を持ち出し…自公は178万円まで上げる気がないのだろう」
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「財源論を持ち出すということは、自公は178万円まで上げる気がないのだろう。自公や知事会、財務省など官僚は、国民民主党ではなく、その背後の有権者と対峙していることをわかっているのか。国民民主党は満額回答を得られなかったら補正予算を成立させないなど非妥協的姿勢を示すべきだ」と指摘する。
岸田文雄政権の〝置き土産〟である防衛増税についても所得税を棚上げし、法人、たばこ2税を先行して決める案も与党内で浮上している。
さらに同じ会社に長く勤めるほど退職金への課税が優遇される控除制度の見直しも議論が始まった。
こうした増税ラッシュは、年収の壁の引き上げ効果を打ち消しかねない。
渡瀬氏は「たばこ税の引き上げも逆進性が強く『低所得者層いじめ』になり、法人税の引き上げも賃上げの足を引っ張るだけでなく、『下請けいじめ』につながる恐れもある。『家計の負担とならない増税』など存在しない。控除見直しなど目立たない増税から着実に対象を拡大し、年収の壁の引き上げ分をトントンにする狙いがうかがえる。石破政権がこうした案を示すこと自体が景気にとってマイナスだ」と警鐘を鳴らした。