「もうそろそろいらない」と感じるものがテレビには多いですが、その代表格が「番宣稼働」だと思います。新ドラマや映画の宣伝のためにワイドショーやバラエティー、最近ではニュースまでに出演させるのが「業界の習わし」ですが、どれだけ視聴者に求められているんでしょうね?
そぐわない人がそぐわない番組に出演させられて痛々しいですし、「どうせ告知しに来てるんでしょ」と思うと見ていて白けます。俳優さんも、出たくもない番組に無理やり出演してさぞつらいだろうなと思います。
では、番組サイドが、有名な俳優に出てもらってうれしいかというと、もちろん俳優さんのバリューによりますが、なんだか「気を使わなきゃいけないし、めんどくさいだけ」という場合も多いんですよね。局のマスト案件だから仕方なく…って感じ。
なんだか出演者も視聴者も番組サイドもそんなにうれしくない…しかもそもそも宣伝効果は本当にあるのか? なんだか実に疑わしい感じもします。若者向けのドラマの出演者を高齢者しか見てないワイドショーに無理やり引っ張り出しても、どう考えてもあまり効果はなさそうですもんね。
そろそろ「番宣稼働を条件にしてそれありきでドラマにキャスティングする」とかやめたらいいのに、と思います。番宣にもきちんと戦略と経費を考えて計画的にやったほうがいいと思いますよね。なんか「金を払うんだから精いっぱい使い倒そう。それで少しでも枠が豪華な見た目で埋まればお得」みたいな「経費削減のためのケチくささ」を感じてしまいます。
制作費が安いからというのも背景にあるんですが、「テレビに出してやるんだからタダでいいでしょ」みたいなマインドは通用しなくなってきているご時世です。出演者の衣装って、スタイリストさんがアパレル業者からタダで借りてくることが多いんですが、最近はなかなか「テレビに出しても宣伝効果がない」というので、無料で貸してもらいにくくなってきてるみたいです。
グルメ番組でも、かつては「紹介してやるんだから撮影用の料理代は払わない」とか「お店を休ませても休業補償はしない」みたいな番組が多かったですが、最近ではそういう姿勢ではなかなか取材に応じてくれませんし、トラブルになりがちなのできちんとお金を払う番組が増えてきています。「ちゃんと必要な費用は払おう」という世間の当たり前の常識が、テレビ業界にもようやく浸透しつつある、ということでしょうね。
■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。