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中国が漁る日本の「重要土地」リスト 自衛隊施設、空港など安保関連で最多203件…政府初の調査で露呈「情報収集に利用されるリスク」

zakzak by夕刊フジ 2024年12月29日 10時0分

自衛隊や米軍施設、空港、原子力発電所など、国の安全保障に関わる重要施設の周辺、国境の離島などで外国人や外国法人が土地や建物の取得が相次ぎ、政府が実態把握を進めている。23日に開いた審議会では、防衛省市ケ谷庁舎周辺をはじめ、北海道から沖縄まで全国371カ所の取得事例が公表されたが、その半分以上が中国によるものだった。「台湾有事」をにらんで東アジア情勢が緊迫度を増している。識者は、外資の不動産取得規制について、強制力を持つ仕組みが必要だと訴える。

政府初の調査で露呈

政府は、2022年に全面施行された土地利用規制法に基づき、自衛隊基地や海上保安庁の施設、原子力発電所など安保上重要な施設の周辺1キロを「注視区域」、自衛隊の司令部など重要な機能を備えた施設の周辺を「特別注視区域」に指定した。

自衛隊機の離着陸やレーダー運用の妨げとなる工作物の設置や、施設機能に支障をきたすレーザー光の照射、妨害電波の発信など、施設の機能を妨げる「阻害行為」が認められれば、中止を求める勧告や命令を出す。命令に従わなかった場合などの刑事罰も定める。

城内実経済安保相は23日の政府の審議会で「規制法を着実に運用し、重要施設への阻害行為に対し万全を期す」と強調した。

同法施行後初の調査で、23年度に外国人や外国法人による「注視区域」「特別注視区域」の取得が確認されたのは、20都道府県の土地174筆(筆は土地登記の単位)、建物197の計371に上った。都道府県別では東京都が171と最多で、特に防衛省市ケ谷庁舎周辺が104に上る。陸上自衛隊の補給統制本部39、練馬駐屯地20などだった。

取得した側の国・地域別では中国が個人・法人を含めて最多の203(土地87筆、建物116)、面積で計1万6275平方メートル、全体の54・7%を占めた。中国が取得した主な土地は別表の通り。

2位が韓国の49、3位が台湾の46で、ベトナム、フィリピン、米国、シンガポールが続いている。

審議会では自衛隊基地など具体的な重要施設名も列挙された。

元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は公表結果についてこう語る。

「真駒内、練馬、守山、伊丹などの駐屯地は部隊指揮を担う旅団以上の司令部があり、上級幹部らも所属している。今回リストに挙がった美保通信所や与那国島などでは、情報本部施設や情報通信部隊の人員の出入りや、警備要領・監視システムなどの把握も可能だ。外国人が取得した土地で店舗を開けば、隊員らと接触する機会も増え、情報収集に利用されるリスクも否定できない。また、百里基地や、浜松基地などでは空自機のスクランブル(緊急発進)要領や、練習機の飛行訓練などをみれば、練度や、訓練傾向も把握されかねない」

外国人らが取得した土地・建物の多くはアパートやマンションだった。特に首都圏は中国人の投資目的での取得が多いとみられ、利用中止の勧告や命令を出した事例はなかった。

だが、土地を取得した人や会社にその気がない場合でも、有事の際には日本にとってのリスク要因になり得る。

中国には、有事の際に民間人や施設を軍事動員できる「国防動員法」があり、海外在住の中国人も対象になる。中国政府の情報工作活動への協力を義務付ける「国家情報法」もある。

山下氏「自衛隊関連の民間施設も対象に拡大する必要があるだろう」

山下氏は「現時点では純粋な営利目的であっても、有事の際に中国の国内法である国防動員法などをもとに、中国政府から監視や情報収集などの命令が下る可能性も否定はできない」と指摘する。

土地利用規制法に基づいた取得状況の公開は安全保障上一歩前進したといえるが、いまだ課題は山積みだ。

例えば、より重要度の高い施設周辺を指定した「特別注視区域」では、一定面積以上の取引に関し、売買当事者に事前の届け出を義務付けているが、売買そのものは規制していない。

米国では、外国資本が軍事施設周辺の不動産を購入する場合は審査対象となり、大統領に取引停止権限が与えられている。オーストラリアでは農地や商業地、居住地などについて外国人は一定額以上の土地の権利を取得する際には政府への通知や、承認が必要となるなど強制力を持つ。

前出の山下氏は「重要な施設の周辺ですでに取得された土地について、踏み込んだ措置を取るのが難しいというのが実情だ。中国以外の外国法人に中国が出資者として関与したり、日本人に土地を買わせたりするケースの場合は追跡の手段が皆無に等しい。自衛隊に関連する民間施設にまで範囲を指定するなど対象区域を拡大する必要もあるのではないか」と強調した。

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