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年金世代・予備軍「シニアの居場所」 現実的には困難な65歳からの再就職 「シニア歓迎」の募集と中小企業社長には注意 知識や経験を生かせると「これでは話が違う」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月22日 15時30分

現在、多くの企業は60歳を定年とさだめ、その後は希望に応じて再雇用し、65歳まで雇用するのが主流です。

ところが、公益財団法人生命保険文化センターの調べによると、65歳以上の雇用者(役員を除く)は、男女合わせて543万人に達し、過去最多とのことです。つまり、65歳以上でも働く場を求める人は増えているということです。

それを裏付けるように、「シニア世代が活躍する会社」を取り上げる報道も近年増えてきました。

しかし現実的には、65歳からの再就職はまだまだ困難なのではないでしょうか。

都内の企業で執行役員まで勤め、昨年65歳で退職した羽田俊夫さん(66)=仮名=も、まだ仕事を続けたいと考えていました。

羽田さんには再就職の心配はありませんでした。なぜなら、旧知の中小企業社長が「新規事業を始めるので、長年培った知識を生かしてほしい」と定年退職後の羽田さんを迎える約束をしてくれていたからです。正社員採用ではなく、収入もかなり落ちてしまいますが、それでも羽田さんは納得したそうです。

「65歳から年金も出ますが、それだけでは生活は厳しいです。しかし、年金にプラス20万円ほど稼げればいいと割り切れました。なにより毎日行く場所があるのはありがたいことです。毎日家にいるのは耐えられませんから」(羽田さん)

ところが、いざ勤め始めてみると、新規事業の話はどこかに飛んでいき、毎日雑用や小間使いのような仕事をさせられた、と羽田さんは苦々しく話します。

「知識や経験を生かせると思っていたのに、雑用しか仕事が与えられないのです。つらかったですね」

「これでは話が違う」と感じた羽田さんは、あらためて再就職活動を開始しました。経験を生かせる仕事はあきらめ、ハローワーク経由で年齢制限無しの会社に応募したのですが、履歴書を何通出しても不採用。なんとか面接までこぎつけた会社でも、募集より悪い条件を提示され、落胆したそうです。

「シニア歓迎という募集がよくありますが、本当は若い人が欲しいのです。実際にシニアが応募したら簡単に断るんですよ」

羽田さんは今、人手不足で悩んでいる業界の会社に履歴書を出し続けていますが、それでもなかなか厳しいようです。

筆者から見ても、羽田さんは人柄は穏やかで常識もあり、経歴も問題ないように思えます。しかし、やはり65歳からの再就職は困難なようです。

羽田さんの話からは「シニア歓迎という募集をうのみにしない」という教訓が得られます。また、「中小企業のオーナー社長は簡単に方針を変える」ことが現実にあるのだということもわかります。しかし、それらは実際に自分が体験しないとわからないことで、事前の対策は難しいでしょう。

シニアの求職者は弱い立場です。こだわりを捨て、数多く応募するほかないようです。「10社や20社断られるのは仕方ない」というメンタルの強さこそが必要なのかもしれません。

藤木俊明 副業評論家。自分のペースで働き、適正な報酬と社会とのつながりを得ることで心身の健康を目指す「複業」を推奨。著書に『複業のはじめ方』(同文舘出版)など。

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