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肉道場入門! 東京の路地裏にペルーがあった 白金高輪「AKOWA」で味わうペルー郷土の味、どこか懐かしい美食と気やすく楽しい小旅行

zakzak by夕刊フジ 2024年8月20日 6時30分

★絶品必食編

なんて気安く、楽しく、おいしい小旅行なのだろう。日本から片道20時間以上かかるペルー…の料理専門店が都心に現れた。

ペルーは、19世紀に中国や日本から契約移民が移り住み、いまも中華料理や日本料理の影響も色濃く残る国だ。〝ニッケイ〟と言われる料理の分野もあるし、スペイン、アフリカ、フランスなど、世界各国の料理文化の集積地という趣すらある。

そのペルーにおける代表的な肉料理が「ロモサルタード」。スペイン語で「ロモ」は牛のロース肉、「サルタード」は炒めるという調理法を指す。

小さく切った牛肉を玉ねぎやトマトと炒め、フライドポテトやライスとともに提供される。

調理法は中華風だが、味の要は和風の醤油。昔、移住した日本人が持ち込んだ醤油が、現地風にアレンジして製造されている。表記は「SIYAU」、読みは「シジャウ」。メーカー名はどこか聞き覚えのある響きの「KIKKO」だ(笑)。

この店のロモサルタードには、郷愁と先鋭が絶妙にミックスされている。醤油と赤ワインベースのソースは力強くも精妙で、メインとなる肉もフィレ肉を強火と休ませを繰り返して、見事なロゼ色に焼き上げる。

運が良ければコースのメインだが、コースにその姿が見えなければ、アラカルトの1品としてオーダーすればいい。

この店「AKOWA」(東京・白金高輪)のシェフ、ワルテル・ラバホスさんは祖母と母が作る郷土料理で育ち、サン・イグナシオ・デ・ロヨラ大学とリマのポール・ボキューズ学院で調理学を修めた。

2016年から6年間、在日ペルー大使公邸の専属料理人として腕を振るい、今年5月「AKOWA」をオープンさせた。

店内に薄く流れるラテンのBGM。マダムがカウンター前で楽しげにリズムに乗っている。たまに料理も運ぶシェフは、厨房への戻り際に人懐っこい笑顔と片言の日本語で「ドウデスカ?」と語りかけてくれる。

いい気が充満する店内で、互いにたどたどしい言葉遣いで、皿の上の料理や自国の食文化についての話が盛り上がる。

白金高輪の路地裏で、ペルー郷土の味を現代の技術で引き上げたどこか懐かしい美食と、豊かな小旅行という楽しみまでも提供してくれる。

■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しい。新著「教養としての『焼肉』大全」(扶桑社刊)発売中。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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