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有本香の以読制毒 奥能登視察で「異常な」復興遅れ痛感 与党議員は被災地の現状に真摯に向き合う姿勢を 「5500億円超を支出」は詭弁

zakzak by夕刊フジ 2024年7月30日 11時0分

私は27、28日、今年1月1日に発生した「能登半島地震」の被災地、奥能登を視察してきた。政治団体「日本保守党」の代表で作家の百田尚樹氏、保守党のスタッフ2人と、主に石川県輪島市と珠洲市を回り、被災した方々や地元メディア関係者、復興に携わる方々のお話を伺った。

その感想をあえて一言にすると、「大変ショック」だった。輪島でも珠洲でも、市の中心にさえも瓦礫(がれき)が山と積まれたところ多々あり、到底、発災後7カ月の街とは思えなかったからである。

「能登の被災地の復興が遅れている」―。現地を知る方々のこういう訴えをよく耳にし、目にしてきた。

アルピニストで災害支援の経験も豊かな野口健さんは3月1日、自身のX(旧ツイッター)に、「今回は今まで僕が経験した被災地と何かが違う」と投稿していた。

発災2カ月後のこの時点で、野口さんは9000個以上の冬山用の寝袋などを被災地に届けていたが、依然、寝袋への問い合わせが多いとも投稿していた。その背景として、被災2カ月で避難所から半壊の自宅に戻らざるを得ない人や、1カ月半たっても避難所で敷布団もなく段ボール1枚敷いて寝ている被災者がいることも明かし、「この国は果たして本当に先進国なのか」とも記していた。

これに対し、数量政策学者の高橋洋一氏が、次のようにリプライした。

「今回の能登半島地震がこれまでと違うのは、財政の観点から見ると、従来は震度7クラスでは1カ月余で災害復旧の補正予算が必ず計上されていたが、今回はそれがなかったこと。予備費でチマチマ使うのと、補正予算でドカンは違うでしょう」

高橋氏は同じことを、筆者の主宰するネット番組「ニュース生放送 あさ8時!」でも解説していた。これは重要な指摘である。

自民党議員の中には「政府は能登半島に5500億円超を支出した」と強弁する者もあるが、これは幼い考えか、詭弁(きべん)だろう。災害時に限らず資金というものは、トータルの支出額のみならず、いつ、いかなるかたちで投入するかが重要である。

与党議員にはぜひとも「保身」に汲々とせず、「能登の現状」に真摯(しんし)に向き合う姿勢を見せてほしい。

野口さん以外にも警鐘を鳴らすエキスパートはいた。

幾多の災害現場を経験し、能登半島地震でも発災直後から最も遠い珠洲市へ繰り返し赴き、ボランティア活動を続けてきた防災士の大河内元喜(おおこうち・げんき)さんは、「今までの現場とまったく違う」と警鐘を鳴らしてきた。

大河内さんは、「ニュース生放送 あさ8時!」に出演した際、日頃の温厚さと打って変わって、語気を強め「これは異常です」と訴えていた。

私たちの今回の視察は、複数のエキスパートが「遅れ」を指摘する現場をこの目で見て、被災地の方々の話をじかに聞いて、いま日本保守党としてできることを具体的にプランするためのものだった。

金沢市からレンタカーで走ってみると分かるが、道路事情もまだ悪いところがある。輪島市や珠洲市の市街地に入ると、冒頭述べたように瓦礫の山、崩れた家があちこちにある。

そんな中で筆者が驚いたのは被災した方々の辛抱強さと上品さである。

不幸を愚痴ったり、行政の不備を責め立てたりする人はいない。しかし、尋ねれば問題点をきちんと整理し説明してくれる。被災者同士助け合う自助精神の強さにも驚かされた。

能登での課題はあまりにも多い。今も避難所に暮らす方々のことはもちろんだが、仮設住宅入居者にも不自由がある。家こそ壊れなかったが、今も水道が再開していない地域に暮らす方々もいる。多くの人が仕事を失ってもいる。

他方、一部の仮設住宅は早々に建ったものの、入居経緯に奇妙な点があったりもしたという。しかし、一様に「議員は役に立たない」との諦めの弁が聞かれる。

設立から1年未満のしがない政治団体たる「日本保守党」は非力だが、小さな一つでも、被災した方々のためになることを実践したい。今、その一心である。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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