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ニュース裏表 有元隆志 〝小泉劇場〟思い出せ! 次期総選挙には「自民は変わった」印象が必要 総裁選、年功序列や当選回数に固執するベテランたち

zakzak by夕刊フジ 2024年8月2日 6時30分

橋本龍太郎首相の辞任表明に伴う1998年7月の自民党総裁選で、3候補にインタビューをしたことがある。地味な小渕恵三氏と、陸軍士官学校出の梶山静六氏、小泉純一郎氏の戦いだった。田中真紀子元外相は「凡人、軍人、変人の争い」と表現した。

小泉氏は郵政民営化の一点張りで、私は「首相としてふさわしくない」と思ったが、その小泉氏が3年後の2001年4月に首相に上り詰めた。それだけ、自民党が厳しい状況に直面し、小泉氏を選ばざるを得なかったのである。

小泉氏は厚労相や郵政相にはなったことがあるが、主要閣僚である官房長官や外相、財務相には就いたことがない。幹事長や政調会長など党幹部も経験していない。それでも結果的には戦後4番目の在任期間となった。

このエピソードを持ち出したのは、9月の自民党総裁選を控え、ベテラン議員の間から、「党幹部や主要閣僚を経験していない議員は、総裁には無理」との声が出ているからだ。

ベテラン議員らは、小泉氏が「自民党をぶっ壊す」と叫んで政権を奪取したことを忘れているのだろうか。「既得権益にしがみついた抵抗勢力を排して改革を遂行する」と訴えて、国民の高い支持を得た。小泉氏の言う「抵抗勢力」とは旧竹下派のことを指していた。

小泉政権発足前も「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」(KSD)の政界工作事件で、村上正邦・元参院議員会長が逮捕されるなど、「政治とカネ」の問題が批判を浴びていた。ハワイ沖で水産高校実習船「えひめ丸」に米原潜が衝突し、高校生らが亡くなった際の森喜朗政権の対応のまずさもあり、自民党内から首相交代を求める声が相次いだ。

公明党の神崎武法代表(当時)も「自民党総裁として責任がある」と森氏に辞任を促した。

神崎発言と同じように、公明党の石井啓一幹事長は3月10日、BSテレ東番組で、「(総裁選で)選ばれた総裁は非常に支持率が高くなるということがありますから、やはり(総選挙は)秋が一番可能性が高いのではないか」と述べ、岸田文雄首相の退陣を望む考えを示した。

石井氏に言われるまでもなく、岸田首相が辞任して、フレッシュな顔ぶれにならない限り、「自民党は変わった」という印象を与えることはできない。ベテラン議員らが事態の深刻さを分かっているとは思えない。彼らの「条件」に当てはまるとすれば、外相、経産相、幹事長を歴任した茂木敏充氏、あるいは官房長官、厚労相、総務会長の経験がある加藤勝信氏らの名前が浮かんでくる。ベテラン議員は、茂木氏や加藤氏で次期総選挙、来年の参院選に勝てると思っているのだろうか。

もちろん、「平時」なら主要閣僚や党幹部を歴任してから総裁になった方が望ましいに決まっているが、今はそのような余裕はない。さらに20年前と異なるのは、日本を取り巻く国際情勢がはるかに厳しくなっていることだ。年功序列、当選回数で総裁を選ぶときではない。 (産経新聞特別記者・有元隆志)

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