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加速する「トランプ2・0」金利上昇が不動産を直撃、物価も急騰…備えない企業は淘汰 苦境を乗り切った先にある日本の繁栄

zakzak by夕刊フジ 2025年1月20日 6時30分

ドナルド・トランプ氏が1月20日、米大統領に就任する。政権2期目では、関税の引き上げを含めたドラスチックな政策が実行される見込みだ。国際投資アナリストの大原浩氏は、「トランプ2.0」はインフレや金利上昇を招き、短期的には米国だけではなく、日本を含む世界に大きな混乱をもたらすと指摘している。

イスラエルとイスラム組織ハマスが15日、ガザ地区での停戦に合意した。発効は19日だ。「トランプ氏が大統領に就任するから」と考えるべきであろう。

米国内でもトランプ氏らのリーダーシップが発揮され、非効率性や腐敗などが強力に是正されるはずだ。

だが、良いことばかりではない。強力な改革は痛みも伴う。世間では楽観的見通しが支配的なインフレや金利は、「トランプ2.0」で急騰する可能性が高い。

そもそも、日本だけではなく世界の主要国で生産年齢人口が減少傾向で、物やサービスの供給が滞りがちだ。また、脱炭素政策の影響で、原油を始めとするエネルギー供給のための設備投資が長年滞っている。

いくらトランプ氏でも、個別の紛争ではなく世界的に広がる地政学リスクの拡大そのものを止めることはできない。したがって、輸送の安全などの問題からも物価は上昇しがちだ。

世界中のほとんどの国が「大きな政府」を志向する傾向にある。財政支出で足りない部分を賄う借金(国債など)の金利が上がり始めれば、利払いのための借金を重ねなければならず、金利の上昇が加速する。

残念ながらトランプ氏でさえ、このような経済的難問に対する有効な対処法を持ち合わせていないように思える。米連邦準備制度理事会(FRB)や日銀、日本政府も同様だ。

まず、危険なのは不動産だ。戦後、世界的に不動産価格が上昇してきたのは、1950年におよそ25億人であった世界人口が3倍強の80億人以上に膨れ上がった影響が大きい。この動きが歴史的に反転しつつある現在、不動産(特に土地部分)価格の行方は容易に想像できる。

不動産と借金は斬っても切れない関係にある。株式の信用取引で5000万円を投じる人はそれほど多くないであろうが、住宅ローンという事実上の「不動産信用取引」での5000万円はありふれている。商業用不動産も借金をして投資を行うのがごく当たり前だ。だから、不動産市場は金利上昇によって大きなダメージを受ける。

それに対して、株式投資への金利の影響は不動産ほど大きくない。投資家のウォーレン・バフェット氏が、米株式市場全体のバブルに警戒心を隠さないものの、お眼鏡にかなった優良企業には投資を続けている理由だ。

日本の企業は1990年頃のバブル崩壊以来、「筋肉質」に改善され、上場企業を中心とした待機資金の多さは、「有効活用していない」「ため込みすぎ」と批判されるほどだった。

だが、金利が上昇し資金調達が困難な状況へと向かう中で、日本の優良企業の選択の正しさが明らかになってきた。

もちろん日本でも過剰な借金を抱えた企業や、インフレに対応した値上げを行うためのブランド力や商品力を持たない企業は、これから淘汰(とうた)されていく。

「トランプ2.0」が日本にもたらす混乱は、決して生易しいものではないが、その苦境を乗り切ったところに繁栄がある。日本は、明治維新や第二次世界大戦敗戦後の苦境を乗り越えてきた国だ。困難に対峙(たいじ)するときこそ、日本が輝くときである。

■大原浩(おおはら・ひろし)人間経済科学研究所代表パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

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