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ノマドの窓~渡る世間はネタばかり~ 「アメリカ50州を30秒で言える」のが特技 映画・小説に感化、36歳でアメリカ全土を放浪旅 今でも手に取るようにわかる距離感

zakzak by夕刊フジ 2024年11月20日 15時30分

アメリカの大統領選挙が終わったが、4年に一度のこのイベントの際に目にするのがアメリカの地図だ。スポーツ番組で、メジャーリーグの30球団を紹介するときとかにもテレビ画面にアメリカ地図が出るけれど、選挙の際は「(選挙人獲得のための)最重要州はココとココと…」というように具体的な州名が頻繁に出るし、赤や青で示されるので、普段よりアメリカを身近に感じられるように思う。

さて僕は(決して自慢ではないが)「アメリカ50州を30秒ですべて言える」という特技を持っている。言うだけではなく、白地図があれば「(たとえば)アーカンソー州は、はいココ!バーモント州はココ!」と50州全部を即座に指差せる。

というのも、36歳(1996年4月から翌年3月まで)のとき、日本を離れ、アメリカ合衆国を車で放浪していたからだ。仕事ではなく、ただ無職・住所不定の身として、夫婦二人で車を走らせる日々。

まずはマイアミからスタートして、北上・南下・北上・西へ・東へ・また西へ・南下・東へ、という気まぐれ旅。その町が気に入ったら何日間も滞在するし、気に入らなかったらすぐに出て行く、そんな感じ。1泊二人で30~40ドル(当時は1ドル100円かそれ以下)のモーテルを探し、食事はできるだけ自炊で済ませるという「貧乏上等」な日々。

そんな無謀なことをした理由は、ただシンプルに映画「バニシング・ポイント」や「イージー・ライダー」なんかのニューシネマに感化され、ジャック・ケルアックが書いた小説『路上』の主人公の真似をしたかったからだ。

アメリカを1年間で走り回った走行距離は約6万キロ。交通違反で数回捕まったり、ベースボールを70ゲームほど観たり、たくさんのリトルタウンの祭りを楽しんだり、日本ではほとんど知られていないB級グルメを満喫したりした1年間だった。

僕はその放浪旅で、それまでの貯蓄をすべて使い果たしたのだが、今でも「行って良かった」と思っている。大陸から離れたアラスカとハワイを除いた48州を走ったことで、アメリカを舞台にした映画を観ると「ノースダコタのビスマルクからテキサスのエルパソまで車を走らせてきたんだぜ」というようなセリフがあると、その距離感が手に取るようにわかる。

そして何より「あぁ、あのあたりの州で暮らす人たちはトランプに投票するよなぁ」ということがしみじみ納得できてしまうのだ。

僕はハリス候補を応援していたけれど…。

■東野ひろあき(ひがしの・ひろあき) 1959年大阪生まれ、東京在住。テレビ・ラジオの企画・構成(FM大阪「森高千里ララサンシャインレディオ」)、舞台脚本(「12人のおかしな大阪人」)やコンサート演出(松平健とコロッケ「エンタメ魂」)、ライブ企画・構成(「小室等de音楽祭」)、コメディ研究(著書『モンティ・パイソン関西風味』など)。猫とボブ・ディランをこよなく愛するノマド。

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