石破茂首相が、野党が主張する「企業団体献金の禁止」に対し、「憲法違反」まで持ち出して抵抗したことが注目されている。国民の血税から「政党助成金」を受け取りながら、企業団体からも献金を集める「二重取り」には批判や疑問も多い。国民が期待する「減税」論議が停滞するなか、献金に執着する石破首相は「身を切る政治改革」を断行する気があるのか。
「企業も『表現の自由』を有している。それは自然人(個人)か法人かを問わない」「企業団体献金を禁ずることは、少なくとも(表現の自由を保障する)憲法21条に抵触すると思う」
石破首相は10日の衆議院予算委員会で、こう答弁した。
企業団体献金の位置付けをめぐっては、各党の立ち位置が違う。
立憲民主党は「企業献金の禁止」を軸とする政治資金規正法の再改正案を参政党と社民党と共同提出したが、日本維新の会と国民民主党は「立民案は政治団体が対象から除外されている」として加わらなかった。
一方、自公与党は企業献金の廃止に慎重で、「有識者らへの意見聴取を優先すべきだ」と主張し、結論を先送りしているようにみえる。
「国民の怒りは激しい…存続論には説得力必要」鈴木哲夫氏
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「自民党は長年、企業献金を受けてきた経緯があって党内には廃止に抵抗する声が根強い。一方、国民の『政治とカネ』への怒りは激しく、判断基準はシビアだ。よほど説得力がないと存続論の納得は得られない」とみる。
こうしたなか、石破首相は「憲法違反」を主張して、企業献金を死守する姿勢を示した。これをどう見るか。
政治学者の岩田温氏は「仮に憲法の『表現の自由』で企業団体献金が認められていたとしても、国民の税金が『政党助成金』として支持していない政党に支払われる仕組みは、国民の表現の自由に抵触しないのか。憲法を盾にとれば、矛盾が生じるのではないか。私は『企業団体献金か、政党助成金のいずれかを廃止すべき』との立場だが、政治資金の議論の兼ね合いで憲法を持ち出すべきではない」と指摘した。