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日本の解き方 なぜか「減税」を嫌がる財務省 「歳出権の拡大」で各省に恩売り…天下りへ 官僚主導の財政支出、民間に任せた方がうまくいく

zakzak by夕刊フジ 2024年11月7日 11時0分

国民民主党が掲げている「年収103万円の壁」撤廃について、基礎控除を75万円引き上げた場合、「7・6兆円の減税になる」「高所得者の減税額が大きい」などと報じられた。

筆者は先日の本コラムでは「仮に基礎控除を75万円引き上げると、所得税率が平均10%、住民税率が10%とすれば、7兆円程度の減収額となる。もっとも、この程度であれば、名目5%成長すれば自然増収で手が届く範囲であるので、それほど心配する必要はないともいえる」と書いた。

少し財政をかじったことがある人であれば、この程度の減収の試算をするのは簡単だが、マスコミが記事にする際には財務省に聞くことが多いのだろう。

2023年度の税収は72兆761億円だった。名目国内総生産(GDP)が1%変化したときに税収が何%変化するかを示す「税収弾性値」は一般的には「2~3」なので、名目成長率が5%だと、税収は10~15%、つまり7兆~10兆円程度増加することになる。

また、名目5%成長を実現するには、インフレ率を2~4%にすればいい。このためには2%のインフレ目標について、日銀が利上げを遅らせる「ビハインド・ザ・カーブ」の運営を行う。その上で、GDPギャップ(潜在的な供給力と実際の需要の差)をなくすような積極財政をするだけだ。

それにしても、財務省がなぜ減税を嫌がるのか、一般の人には理解できないだろう。その一方で財政支出はそれほど抵抗なく行う。減税も「租税歳出」といわれ、財政の理論では財政支出と同じことなのに、この態度の差は何か。実はここに理由がある。

財務省は増税を好むが、増税すると歳出を膨らますことができる。これを財政用語では「歳出権の拡大」という。これこそが、財務省の権限の源であり、各省に対して売れる恩でもある。歳出権を各省にばらまいて、そのご褒美として、各省の団体に天下りできるというのが望ましい。

一例を挙げれば、経団連が「コンテンツ省」設置を提言し、予算2000億円を増やすように提言したという。これは、財務省的には受け入れ可能なものだ。

しかし、役人がコンテンツ業界をリードできるはずなく、こうした省庁は間違いなく失敗する。新しい省庁ができれば、その関連団体もできて、天下りの巣窟になりやすいが、そこで新産業が生まれるはずはない。これまで官僚主導でうまくいった試しはほとんどないからだ。

筆者は、役人が財政支出するくらいなら、減税して民間に任せた方がはるかにマシだと思っている。財政の理論では、財政支出と減税は同じであっても、経済効果では政府が主体になるか民間が主体になるかで異なっており、減税の方が経済効果が大きいと思っている。

国民民主党はガソリン税の減税も主張している。補助金支出でガソリン価格を抑えるより、減税で抑える方がまともな経済政策だといえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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