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ぴいぷる 磯村勇斗が告白、役者をやめようとまで追い込まれた経験 出演作品で世の中の意識を変えたい 10日公開「劇映画 孤独のグルメ」

zakzak by夕刊フジ 2025年1月9日 6時30分

テレビや映画に引っ張りダコの人気俳優だ。役を演じるにあたり、大切にしていることは、「現場を大事にすること」だという。

「すべて(大切なことは)現場にあるので、現場で台本とは違うアイデアが生まれたときは、柔軟に対応します」

昨年、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞に輝いた。

「デビューして10年の節目で賞をいただけたことはうれしかったです。ここから第2章に進んでいくのだと思っています」

そんな新たな挑戦が始まっている彼が、10日から公開される「劇映画 孤独のグルメ」に出演する。テレビドラマ「孤独のグルメ」シリーズの劇場版で、監督、脚本、主演を松重豊が務めた。

「松重さんは、非常に頼もしかったです。監督は、役者と違う頭の使い方をするので大変だったと思うのですが、そういうのを一切見せず、スタッフさんのことも大切にされていました」

輸入雑貨の貿易商の井之頭五郎(松重)は、フランスに住んでいる一郎から「子供の頃に飲んだスープをもう一度飲みたいから、そのレシピと食材を探してほしい」と依頼される。五郎はわずかなヒントを頼りに究極のスープを求めて仏、韓国、長崎、東京を駆けめぐる。

彼は、五郎のスープ探しを手伝う青年・中川を演じた。本作での自然な芝居を見て「素に近い役なのかな」と感じたが、実際に会った彼は、しっとりとした大人の雰囲気でまるで別人だった。

「演じているのは自分なので、自分らしさは出ますが、中川として役を作っていました」

現場の空気に溶け込んで演じるから、あたかもその人物がいるかのように見えるのだ。

これまで爽やかな青年から殺人鬼まで振り幅の大きい役を演じてきた。自分の中の切り替えはどうしているのだろうか。

「撮影が終われば、役もそのまま置いていきます。現場に入れば、メークや衣装によってスイッチが入るんです」

カメレオンのように、彼は〝現場の色〟に染まっていくのだ。

出演作品には、貧困やネグレクトなど、社会的な問題や「生きづらさ」をテーマにしたものも多い。そこには、「世の中の意識を変えていきたい」という思いがあるという。

「政治家ではないので、言葉で訴えることはできませんが、役者として表現することはできるので、映画というフィルターを通して、世の中を少しでも生きやすくしたり、人々にマイノリティーの部分に気づいてもらったりするお手伝いができるといいなと思っています」

正義感の強いタイプなのだ。社会の改善は必須だが、個人でもできることがあるとしたら、何だろうか。

「自分の心を大事にすることと、周りに流されないことじゃないですかね。集団生活を学んできているがゆえに、『誰かがやるなら、自分もやる』といった考え方を持ちがちですが、『自分がどう思うか』を、僕は大事にしたいです」

これまでも流されずに、〝自分の選択〟をしてきたのだ。順調に見えるが、芸能生活では何度も挫折を味わってきたという。

「うまくいかなくて監督に怒鳴られたことも、『この役はうまくできなかったな』と反省することもあります。仕事が何本も重なって疲弊して、このまま役者を続けるのは厳しいと悩むこともありました」

実は、役者をやめようとまで追い込まれたこともある。どう乗り越えたのか。

「休みをもらいました。先ほどの話にもつながりますが、自分を大切にして、休む時間は作ったほうがいいですよね」

昨年は念願だった「しずおか映画祭」を実行委員会代表になって開催。「やってよかったです!」と笑顔を見せる。

「地元の人もゲストの人も喜んでくれました。1回だけでなくて、続けていくことが重要で一番難しいところ。地元の人たちと一緒に作っていけたらいいですね」

〝素顔の彼〟は、頭の回転が速くてクレバーで、映画愛にあふれていた。彼の第2章が楽しみだ。

■磯村勇斗(いそむら・はやと) 俳優。1992年9月11日生まれ、32歳。静岡県出身。2014年に俳優デビュー。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17年)、「きのう何食べた?」(19年、テレビ東京系)、ドラマ25「サ道」シリーズ(19~24年、テレビ東京系)、「不適切にもほどがある!」(24年、TBS系)など数々の話題作に出演。23年に映画「月」をはじめ、「最後まで行く」「波紋」「渇水」「月」「正欲」などの作品で、報知映画賞助演男優賞、ヨコハマ映画祭助演男優賞、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞 助演男優賞などを受賞した。

ペン・加藤弓子/カメラ・酒井真大

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