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テレビ用語の基礎知識 ニュース番組ではほぼNG「隠し撮り」の恐怖 犯罪が目の前で「コンプラ的にアウト」もホントにそう? 現場取材しなくなったテレビ

zakzak by夕刊フジ 2024年10月3日 6時30分

テレビはコンプライアンスを気にしていろんなことができなくなりましたが、そのひとつに「隠し撮り」がありますね。まあ、今でもバラエティー番組で芸人相手に隠し撮りするとかはありますが、ニュース番組ではほぼNGになりましたよね。でも、思い出してみると、僕のテレビマン人生は隠し撮りばかりしていました。

まず多かったのが「もうすぐ逮捕されそうな人の家や職場」の近くの路上にワゴン車を止めて、車内で張り込んで顔を撮影することですね。短くて数日、長いと何週間もずっと車の中に潜んでいなければなりませんから、つらい撮影でした。

警察に通報されて、職務質問されたりするのは日常茶飯事。韓国のとある街で、北朝鮮元工作員の日本人拉致実行犯を撮影するため、かなり長期間にわたって張り込んだときには「自分は一体何をやってるんだろう」と悲しくなりました。

外国の団地で、朝から晩まで車の中。食事はのり巻きばっかりです。

あと、よくやったのが「ボタン型小型カメラ」を使った隠し撮り。ボタンの穴がレンズになっているやつがあるのですが、安いセカンドバッグに穴を開けてそれを仕込んでいろいろ「ヤバい場所」に潜入します。

薬物とか違法なものの取引現場なんかが多くて、国内も海外もよく潜入しましたが、これ、なかなかうまく撮影できない。ちょっとカバンを持つ角度を間違えると、肝心なものが何も映っていません。

だから、何人かで同時に何台かの隠しカメラを持って撮影するわけですが、やっぱりたまにバレます。それで結構怖い目に遭いました。断然海外が怖いですね(笑)。

警備員に取り囲まれて銃を突きつけられたこともあるし、警察に連行されたことも、ある国で指名手配されたこともあります。犯罪組織の人に路上で突撃取材したら「襲撃罪」になるっていうんですよね。いまだにその国には、ひょっとしたら入国した途端に逮捕されそうなので、不安で行けないです。

結構危ない取材ですし、安全性の問題もあって「やっちゃダメ」ということになった側面も大きいと思うんですけど、もうひとつ言われるのが「犯罪が目の前で行われているのに、それを止めないことがコンプラ的にアウト」ってことです。

「なんで警察に通報しなかったのか」という理屈ですよね。ホントにそう? と思いますし、全然テレビが現場取材しなくなって、視聴者や当局に提供された映像ばっかり放送するようになったことのほうが問題としては大きいような気もしてしまいます。

■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。

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