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〝現代版アヘン戦争〟トランプ次期米大統領、対中関税強化 社会問題化するゾンビ麻薬「フェンタニル」の密輸阻止 米朝トップ会談も検討

zakzak by夕刊フジ 2024年11月27日 15時30分

ドナルド・トランプ次期米大統領が、来年1月20日の就任前に、次々と外交方針を打ち出している。25日、習近平国家主席率いる中国からのほぼ全ての輸入品に10%の追加関税を課すと発表した。米国で社会問題化する医療用麻薬「フェンタニル」の密輸阻止を理由に挙げた。現代版「アヘン戦争」を勝ち抜く構えだ。また、米国に麻薬と犯罪を持ち込んでいるとして、メキシコとカナダにも就任初日、すべての輸入品に25%の関税を課す大統領令に署名する方針を明かした。トランプ氏のチームは「米朝トップ会談」も検討している。石破茂首相は先の南米訪問で「外交失態」を連発したうえ、「対中融和」姿勢も懸念されている。強固な日米同盟を維持できるのか。

「米国に流入する大量の麻薬、特にフェンタニルについて中国と何度も話し合ったが、何の成果もなかった。中国は麻薬密売人には死刑を適用すると言ったのに残念ながら果たされていない」

「メキシコとカナダは、犯罪と麻薬をかつてないレベルで(米国に)持ち込んでいる。(両国に科す予定の)関税は、麻薬、特にフェンタニルとすべての不法移民が、わが国への侵略を止めるまで有効だ」

トランプ氏は25日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」にこう投稿し、中国とメキシコ、カナダへの関税強化を宣言した。

投稿で特に問題視したフェンタニルは、がん患者の苦痛を緩和することなどを目的に使用されている医療用麻薬で、強い鎮痛効果がある。

米疾病対策センター(CDC)の推計によると、2022年に米国で薬物の過剰摂取により死亡した人は過去最多の約11万人。このうち約7割がフェンタニルをはじめとする麻薬性鎮痛剤によるものだった。

フェンタニルを摂取すると幻覚症状などを引き起こす。乱用患者は極端に前かがみな姿勢のまま動けなくなるなど「ゾンビ麻薬」とも呼ばれる。16年に急逝した米歌手、プリンスさんの死因がフェンタニルの過剰摂取だったことはよく知られている。

中国製の原料をメキシコの犯罪組織が合成・密輸するのが主なルートとされ、現在のジョー・バイデン政権も、犯罪組織撲滅や密輸阻止に取り組んできた。米司法省は7月、フェンタニルの密造や取引を主導した疑いがあるメキシコ最大級の麻薬組織「シナロア・カルテル」の共同創設者らを逮捕した。

第1次トランプ政権でも、中国にフェンタニルの取り締まりを要求したが、対策は遅々として進んでいない。トランプ氏は第2次政権で、米国社会の秩序を破壊しかねない「史上最悪の麻薬」の撲滅を目指しているのだ。

これに対し、中国外務省は26日の報道官談話で「フェンタニルは米国の問題」「中国は麻薬対策が最も厳格な国の一つだ」と主張した。

今回のトランプ氏の投稿をどうみるか。

ジャーナリストでキヤノングローバル戦略研究所主任研究員、峯村健司氏は「フェンタニルは米国で深刻な問題となっている。ただ、第1次トランプ政権に比べ、バイデン政権では効果的な対策を取ってこなかった。今回、中国だけでなく、メキシコ、カナダにも高い関税を課すことを打ち出したことも斬新な手法だ。対中政策で厳しい姿勢を公約に掲げてきたトランプ氏は早速、バイデン政権との違いをアピールした。習近平政権にも大きな脅威に映っているだろう。効果を上げるのではないか」と話した。

北朝鮮外交についても新たな動きが報じられた。

ロイター通信が26日、複数の関係筋の話として、トランプ政権移行チームが、トランプ氏と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の直接会談を検討していると報じた。現在途絶えている北朝鮮サイドとの意思疎通の再開を当初の狙いとしている。具体的な政策目標や日程は定めていない。トランプ氏自身は最終決定していないという。

■渡瀬氏「積極的な首脳外交が必要も首相にできるか怪しい」

トランプ氏は2018年、シンガポールで史上初となる米朝首脳会談を行うなど、第1次政権時代に、正恩氏と3回も首脳会談を行った。「朝鮮半島の非核化」が主な目的だったが、北朝鮮による拉致被害者の帰国実現を政治的使命とする盟友・安倍晋三首相(当時)の要請を受け、トランプ氏は首脳会談で正恩氏に拉致問題を提起した。

現在の石破政権は、外交に不安を抱えている。

今月に南米で行われたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)や、G20(20カ国・地域)首脳会議では、記念撮影への遅刻、座ったままの握手、腕を組んでの式典の観覧など外交儀礼を欠く振る舞いを繰り返した。

トランプ氏が「主敵」と位置付ける中国の習主席との首脳会談では、右手を差し出した習氏に両手で握手に応じて、「おもねり」と批判された。政権の閣僚についても「親中傾向」が指摘されている。

石破政権で日米関係は大丈夫なのか。

早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「石破政権や外務省には、トランプ政権に対する偏見が感じられ、客観的に分析できる閣僚や識者を重用することが必要だ。トランプ政権が日本に強硬的な交渉や要求をしてくる可能性もある。これに対応するには、日本が他の国々と連携する必要がある。石破首相は首脳外交を積極的に展開していかなければならないが、APECなどでの外交姿勢を見ていると、怪しいのではないか」と指摘した。

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