Infoseek 楽天

ドクター和のニッポン臨終図巻 「かしまし娘」次女・正司照枝さん 家族や友人と「楽しく生きる」が長寿の秘訣 死因の〝心臓突然死〟はピンピンコロリと同義

zakzak by夕刊フジ 2024年7月29日 15時30分

「うちら陽気なかしまし娘ェ~、誰が言ったか知らないが~」

僕が子供の頃、テレビをつけるとよくこの人たちの歌声が流れてきました。3姉妹が「かしまし娘」でデビューしたのは1956年。「かしましい」という日本語を、この人たちの存在で知りました。

長女の正司歌江さんは三味線、次女の照枝さんはリズムギター、花江さんはリードギター。音楽漫才というジャンルの開拓者でもあったように思います。

その次女であり、女優としても活躍した正司照枝さんが7月8日、大阪府内の自宅で亡くなりました。享年91。死因は、「急性心臓死」との発表です。「突然心臓死」とも言われます。

この漢字5文字は、とてもインパクトのある字面で怖い印象がありますが、後期高齢者の「心臓突然死」は、ピンピンコロリと同義だと考えます。妹の花江さん(88)が最期を看取ったのでしょう。このようにコメントされています。

「亡くなった当日もいつもと変わらぬ様子で誰の手も煩わせることなく静かに逝きました。子供の頃からずっと一緒に過ごした姉の死をまだ受け止めることができません。今もまだ隣にいるような気がします」

長女の歌江さんは、今年の1月に94歳で亡くなっています。その際に照枝さんは、

「♪これでおしまいかしまし娘~です♪ 穏やかな最期だったようですがいまはただ悲しい」

とコメントを出しています。その悲しみから半年あまり。照枝さんがお姉さんのもとに駆け付けてしまいました。それにしても、お元気な三姉妹ですね。長女94歳、次女91歳、そしてご存命の花江さんも、きっと90歳を超えても頑張ってくれるはず。

ご長寿兄弟、ご長寿姉妹というのは確かに存在します。平成の時代には、百歳を超えた姉妹「きんさん・ぎんさん」が人気を呼びましたよね。

寿命に遺伝子は関係しているのか? これは医療界において長年の命題でした。そのカギが、「サーチュイン遺伝子」というものにあるとわかってから、20年以上が経過しましたが、最近はこの遺伝子をいかに活性化させるか? というところに市民の関心が高まり、アンチエイジングのさまざまなサプリが爆発的に売れています。

確かにそれらは一定の効果があるでしょう。でも、たとえば「かしまし娘」の3人が、長寿にこだわってサプリを飲んでいたか? と考えると、そうでもないように思います。老化に一番ダメージを与えるのは孤独です。家族や友人と、かしましく、楽しく生きること。長生きの一番の秘訣は、そこに尽きるのではないでしょうか。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。公益財団法人日本尊厳死協会副理事長としてリビング・ウイルの啓発を行う。映画『痛くない死に方』『けったいな町医者』をはじめ出版や配信などさまざまなメディアで長年の町医者経験を活かした医療情報を発信する傍ら、ときどき音楽ライブも。

この記事の関連ニュース