「違う環境を受け入れ自分のものにする」
ボートレース住之江の「SG第39回グランプリ」初日の今月17日、今季限りで現役を引退したヤクルト・青木宣親氏(42)が開会式のプレゼンターやトークショーのゲストで登場。米大リーグ時代に取材していた筆者も仕事で現地に足を運んでいたので、久々の再会となった。
「バタバタしていますけど落ち着いてきました。新しい環境で仕事をして新鮮です」
ボートレース場は初めてというが、トークショーでは引退直後とは思えないほど流暢な語り口で会場を沸かせた。「音がスゴいですね。ゾワッとしたというか、スイッチが入った」。大阪でも人気は高く、会場には背番号「23」のユニホームを着たファンの姿も見られた。
青木氏が大リーグのブルワーズに移籍したのは2012年。18年のヤクルト復帰まで6シーズン、実に7球団でプレーした。トークショーでは食生活などでの苦労を明かす一方、これから大リーグへ挑戦する選手へのアドバイスもあった。
「まったく違う環境になるので、まずはそれを受け入れて、自分のものにすること。日本でやってきたことがいろいろあるけど、新しい自分を作るつもりでやっていました。環境が変わることで、鍛えられました」
メジャー1年目で目撃
この前向きな姿勢を目の当たりにしたのが移籍1年目、アリゾナ州での春季キャンプだった。クラブハウスでの雑談中、「バントかヒッティングか迷う場面で、監督がどちらを好むのか分からない」と口にしたことがあった。「こっち(大リーグ)では監督室のドアが開いていたら、質問に行っても大丈夫。特にここの監督は喜んで答えてくれると思いますよ」と助言すると、すぐに行動に移したのだ。
当時のロン・レネキー監督は、エンゼルスのコーチ時代から何度も取材している旧知の仲。ベンチ前で練習を見ていると近寄ってきて、「青木が通訳と監督室へ来て、いろいろな質問を受けたよ。実に頭のいい選手だと感心した。今季が楽しみだ」とうれしそうに明かしてくれたことを覚えている。
青木氏がボートレース住之江を訪れた翌18日、ヤクルトのゼネラルマネジャー特別補佐就任が決まった。近い将来、監督になる布石だろう。日米で培った経験をいかに生かしていくのか。その日が待ち遠しい。 (元全米野球記者協会理事)