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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 林家つる子と三遊亭わん丈が最速記録、初のトリで大奮闘 「真打ち昇進が決まったときより100倍ぐらいうれしい」

zakzak by夕刊フジ 2024年7月8日 11時0分

早い出世になった。

3月21日に真打ちに昇進した落語家の林家つる子(37)と三遊亭わん丈(41)。今月1日から、東京・上野鈴本演芸場で昼の部はわん丈、夜の部はつる子が初トリを務めている。

落語協会(柳家さん喬会長)の真打ちとしては蝶花楼桃花(年齢非公開)の昇進後4カ月、春風亭一之輔(46)の昇進後5カ月を抜き、3カ月10日で定席公演のトリに大抜てきされた。最速記録だ。

「真打ち昇進が決まったときより100倍ぐらいうれしい」とわん丈。隣でつる子も「私もそうそう」とうなずく。

寄席芸人にとって、寄席のトリを務めることはそれほどまでに大きなこと、特別なことである。昼の部、夜の部の10日間単位で上席、中席、下席で行われる興行スタイル。ひとつの寄席で、ひと月でトリを取れる落語家はわずか6人だけしかいない。

つる子は師匠の林家正蔵(61)に「『披露目とは違う雰囲気になるから、心してかかりなさい、つる(子)がやってきたことを高座にかければいい』というお言葉をいただきました」と伝え、披露目でできなかった噺をかけたいと意気込んでおり、初日には、師匠の十八番「しじみ売り」をかけ、客席をしみじみさせた。

「昼席は観光でふらっと来る方がいる。初めての方にも喜んでいただかないといけない」と表情を引き締めるわん丈は「伝統的でありながらホスピタリティーの高い落語をやらないといけない」とも。中日前は人情噺「ねずみ」や廓噺(くるわばなし)「お見立て」などで、客席を取り込んだ。

猛暑の中の大奮闘。演者も大変だが「不要な外出は控えて」という気象庁の呼びかけを気にしつつ寄席に向かう客も大変だ。ただ、一歩入れば涼しい。

暑さの対処法について、つる子は「大好きな音楽ライブや映画などエンタメを楽しんで、気持ちを盛り上げています」と吸収力をフル回転させ、「寄席に来て夏を乗り切ってください」と呼びかける。

わん丈は「日焼けしないこと。(入門時の師匠の三遊亭)円丈の教えです」と外見にこだわる。内面については「インプットの時間をもう少し増やさないと、と思いましたね」。

各自インプットしたものをアウトプットする初トリ。10日まで続く。 (演芸評論家・エンタメライター)

■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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