有名企業の就職に強い大学を業種ごとに紹介していく業種別就職者数ランキングの3回目は、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの合計就職者数を集計した、「3大自動車メーカーに強い大学ランク」をお届けする。
大学通信は毎年、医学部と歯学部の単科大学を除くすべての大学を対象に就職状況調査をしている。2024年は560大学(74・0%)から回答が寄せられ、その集計値でランキングを作成した。
自動車業界は大変革期にあり、エンジンの電動化や自動運転技術などに代表されるデジタル化が急速に進んでいる。これに伴い、新卒の採用パターンにも変化がみられるようだ。企業の採用支援を行っている、ワークス・ジャパン代表の清水信一郎氏は言う。
「ハイブリッド車やEV(電気自動車)、水素エンジンなど動力が多様化。さらに自動運転などのIT技術が求められる自動車業界は、必要となる研究分野が広がっている。この影響は採用大学の変化に表れています」
3大自動車就職者数ランクを前年と比較すると、私立大の増加が顕著で、4大学から6大学に増えている。機械など重厚な分野は国立大に譲るが、新たに求められている先端分野の研究が進んでいる私立大が多いことが、ランキングに反映されているというのだ。
では、ランキングを見ていこう。私立大が多くなる中でも、ランキングの1位と2位は前年と同じ名古屋大と九州大といった旧帝大が入った。この2大学の特徴は、地元の自動車会社とのつながりが深いこと。名大は総就職者の7割以上がトヨタ。同じく福岡に日産自動車九州がある九大は、5割が日産となっている。
3位と4位は前年と入れ替わり、24年卒は早稲田大、大阪大の順になった。ちなみに、多くの業種別ランキングで上位に顔を出す慶應義塾大は、前年の6位から13位となっている。
「たいていの業種で、早大が多いと慶大も多いものですが、24年卒の自動車の就職状況についてこの関係性が当てはまらないのは興味深い」(前出の清水氏)
前年は早大が4位で慶大が6位だったが、慶大の就職判明数が33人(13位)で前年を4人下回るのに対し、早大が18人増となったことで、順位が離れた。
5位の東京工業大より下はすべて私立大で、6位明治大、7位タイの中央大と東京理科大のいずれも、前年のベスト10圏外からランクインした。
企業別の就職判明率をみると、トヨタは名大52人、名古屋工業大と京大が各24人、大阪大21人、同志社大20人と愛知以西の大学が並ぶ。
対して本社が横浜の日産は東日本の大学が多く、32人の九大以外は、東京工業大22人、明大と中大が各21人、早大が20人。
ホンダは、採用判明数が抜けている大学はなく、早大23人、明大22人、九大と大阪大、芝浦工業大が各20人となっている。
井沢秀(いざわ・しげる) 大学通信情報調査・編集部部長。1964年2月6日、神奈川県生まれ。明治大学卒業後、受験情報・分析を主力事業とする大学通信入社。大学の入り口(入試)から出口(就職)まで、情報を収集し発信中。中高・大学受験の案内書・情報誌を編集するほか、新聞社系週刊誌、経済誌などへの情報提供と記事執筆を行う。