自由を勝ち取るため、11人の罪人たちが大軍相手に壮絶な闘いに挑む! 11月1日公開の映画「十一人の賊軍」は、新政府軍と旧幕府軍の激戦が続く中、旧幕側の「奥羽越列藩同盟軍」だった新発田藩が裏切った歴史的事件を基にした作品。藩は、時間稼ぎのため、11人の罪人に自由と引き換えに「決死隊」となって、とりでを守ることを命じる。銃弾、砲弾、圧倒的な武力で迫る新政府軍。目の前には揺れるつり橋が。絶体絶命の罪人たちがどう立ち向かうのか?!
このストーリーを構想したのは「日本侠客伝」シリーズ、「仁義なき戦い」シリーズなど数多くの傑作を手がけた脚本家・笠原和夫。日本の高度経済成長期、東京五輪が開催された1964年、笠原は「勝てば官軍、負ければ賊軍」と勝ち負けによって善悪が決まり、勝つことだけが正義なのか? と問いかけるべく、シナリオを仕上げた。しかし、当時の東映京都撮影所所長の岡田茂は物語の結末が気に入らず、ボツに。怒った笠原は350枚ものシナリオを自ら破り捨てたという。以来、60年の時を経て、笠原が遺したプロットを基に映画化が実現したのである。
W主演を務めるのは、侍を憎む政(まさ)の山田孝之と罪人とともにとりでに入る藩士・鷲尾兵士郎の仲野太賀。他の罪人には尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力、とりで作戦を指示する藩幹部・溝口内匠に阿部サダヲら個性的な顔ぶれが集結した。演出は映画「凶悪」「孤狼の血」「碁盤斬り」、話題の配信ドラマ「極悪女王」の白石和彌監督。
本格的な殺陣に初挑戦した仲野は、アクションシーンは過酷を極めたが、360度どこを見渡しても壮大な世界観のセットで芝居できたことが幸せだったとコメントしている。エネルギッシュなアクションシーンとともに、殺人、姦通、密航未遂など事情を抱える罪人たちのギラギラした人間味がどこかユーモラスに伝わってくるのも大きな見どころ。令和の映像技術とリアルな人間のぶつかり合いで「集団抗争時代劇」の迫力をとことん体感できる。 (時代劇研究家)
■十一人の賊軍 2024年11月1日公開。白石和彌監督。主演は山田孝之と仲野太賀。現在開催中の第37回東京国際映画祭のオープニング作品として上映された。