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日本美女目録 久我美子という女優 久我美子、独身時代の最後を飾った「松竹ヌーヴェルバーグ」大島渚の監督2作目で強烈なラブシーンも「青春残酷物語」(1960年)

zakzak by夕刊フジ 2024年8月18日 10時0分

久我美子は私生活では平田昭彦と幸せな生活を送っていた。だが1984年に56歳という若さで平田が亡くなり、オシドリ夫婦生活も23年間でピリオドが打たれた。

70年代の後半から、フジテレビの「3時のあなた」に出演するなどテレビや舞台に活躍の場を移していく。それでも89年の映画「ゴジラvsビオランテ」には亡き夫の遺志を受け継ぎ女性官房長官役で出演している。子供がいなかった分、悲しみはいかほどだったか。

「青春残酷物語」(1960年、大島渚監督)は、久我が平田に出会う前年の作品。つまり独身時代の最後を飾った1作ということになる。

経済上の理由から華族というプライドを捨てて飛び込んだ映画の世界。56年の「太陽とバラ」、57年の「黄色いからす」といったゴールデングラブ賞外国語映画賞を連続して受賞した作品に出演し、デビュー後10年の絶好調を経てのこの作品。

大島渚の監督2作目で強烈なラブシーンなどがあり大評判を呼んだ。「松竹のヌーヴェルバーグ」という言葉がここから生まれた。主演は川津祐介と桑野みゆき。久我は桑野の姉という設定。

ゴダールは「真のヌーヴェルバーグだ。私やトリュフォーよりも前に大島は既存の映画とは全く違う時代を撮った」といった。

海外、特に欧州で高く評価され、影響を与えたのは、その時代背景との兼ね合いにあるだろう。過激で反体制的なルール無視の若者たち。モーターボートやアメ車、そして怠惰な金持ちの中年男たち。

普通なら若者が青いリンゴをかじるシーンはたいして意味もないが、じっくり撮っている。そこには明らかに怒りが含まれている。青いリンゴは未熟さを意味しているのだろう。無軌道な若者たちの怒りの矛先は明らかに自分の内側に向いている。そして最後には破滅が待っているのだ。

久我の役は体制の軍門に下った生き方で、それに反発する妹の桑野という構図。だが結局、姉も内心では妹をうらやましく思っている。恋愛の化けの皮をはがしたら欲望だけが暴走する、といった批評家がいたが、言い得て妙である。 =おわり

(望月苑巳)

【次週は「おかげさまで40年 これがWAHAHA本舗だ」です】

■久我美子(くが・よしこ) 女優。1931年1月21日~2024年6月9日。93歳没。46年、第1期東宝ニューフェースに合格。同期には三船敏郎、堀雄二、伊豆肇、若山セツ子、堺左千夫らがいる。47年に映画デビュー。70年代以降はテレビ・舞台を中心に活躍してきた。

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