米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、「この2年間でインフレ率は大幅に低下。米国経済は利下げを急ぐ必要があるというシグナルを発していない」と語り、慎重に利下げペースを判断する考えを示しました。
この発言から、米国のマーケットではFRBの利下げペースが少し鈍化するのではという憶測が広がっています。金利が高止まりすると、円安・ドル高が進行することになります。
米国のトランプ次期大統領が大型減税、関税引き上げを進めると、財政拡張やインフレ再燃につながるかもしれないという思惑から、米国の長期金利は上昇し、これまた円安・ドル高になります。
日銀の方も円安が加速してきたので、輸入品の価格上昇が高まり、12月18~19日の金融政策決定会合で追加利上げを決めるとの観測も強くなりました。
日銀の植田和男総裁も今週18日に名古屋で会見し、2%の物価安定目標の達成に向け、「前進はみられている」と強調。地元経済界との懇談会では、経済や物価が日銀の想定通りなら政策金利を引き上げる基本的方針を改めて語ったそうです。ここは気が緩められないところです。
金利が上がると、以前からこのコーナーでお伝えしているとおり、運用環境の改善が追い風の金融株が強いです。特にメガバンクは2024年4~9月期決算で、通期業績予想の上方修正、配当引き上げ、自社株買いというセットが加わります。16年ぶりに自社株買いをする、みずほフィナンシャルグループなど引き続き注目です。
円安ということでは、トヨタ自動車など輸出に強いところにも目が向きます。トランプ次期大統領が電気自動車(EV)向けの税制支援策の廃止を検討していることも、ハイブリッド車のシェアが高いトヨタには追い風です。今期の連結業績予想を上方修正したTOYO TIREなど自動車関連も気になるところです。
あと、トランプ政権入りするイーロン・マスクさん率いるテスラ向けに車載用電池を供給するパナソニックホールディングス、米国の求人サイト「インディード」が好調のリクルートホールディングスなどの動きも見ておきたいところです。
■おまけのひと言
「〝投資の神様〟ウォーレン・バフェットさん率いる米国の投資会社がアップルなどの保有株を削減して、ドミノ・ピザとプール用品販売会社に新規投資しました。みんなに親しまれる企業を選んだところに、日本の商社に続く投資先のヒントがあるかもしれませんね」
【財ザク!】「貯蓄から投資へ」と提言する政府。その投資で少しでも財産アップを達成するために「うまちゃん」が有益な情報をザクザクとお届けします。
■馬渕磨理子(まぶち・まりこ) 経済アナリスト。日本金融経済研究所代表理事。イー・ギャランティ社外取締役。愛称・うまちゃん。1984年生まれ。滋賀県出身。同志社大学法学部卒、京都大学公共政策大学院修士課程修了。大学時代はミス同志社。『LiveNewsα』(フジテレビ系)など出演番組多数。新刊『馬渕磨理子の金融・経済ノート』(東急エージェンシー)が話題。