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有本香の以読制毒 銀座「聴衆5000人」の違和感 小泉進次郎氏が街頭演説、空疎なフレーズの繰り返し「自民党を変える」ではなく「日本の未来」を語れ

zakzak by夕刊フジ 2024年9月9日 15時30分

7日午後、夏のような日差しが照りつける東京・銀座の4丁目交差点。毎年、日本一地価の高い場所として紹介されるこの「日本一の繁華街」で、小泉進次郎元環境相(43)が街頭演説を行うというので、筆者も日本保守党のスタッフとともに「偵察」に出かけた。

結論からいうと、拍子抜け、いや予想より格段にガッカリした。

まず、聴衆が思ったほど多くない。メディアは「主催者によると、約5000人の聴衆が集まった」と報じていたが、これはトリッキーな話である。

銀座4丁目交差点は常に人通りの多いところで、特に土、日曜日、祝日は銀座中央通りが歩行者天国になるため、人で埋まることも珍しくない(=ただし、最近ではその多くが外国人観光客であったりするのだが)。

あえて人通りの多い場所で演説をすれば、「多くの聴衆に囲まれている」かのような「絵」を容易に撮れる。それをメディアやSNSでうまく拡散すれば、「勢いがある」かのような演出をすることも可能だ。

先の東京都知事選でも、複数の陣営がこの手を使った。進次郎氏にも付いているとされる広告代理店やPR会社が、いかにも考えそうな作戦だ。

しかし、そのありきたりなアイデアがSNS時代にはもろ刃の剣ともなる。実際、現場にいた筆者らの目で見て「5000人」は〝盛った数字〟に感じた。

ただし、噓だとは言えない。なぜなら、銀座4丁目交差点は人の流れが絶えないからである。当日も地下鉄駅の出口からも絶え間なく人が出てきて、それを多くの制服警官が誘導していた。

つまり、あのとき交差点付近に5000人程度の人はいたかもしれないが、それをすべて「進次郎氏の聴衆」とくくることには違和感がある。

ただ、「5000人」という見出しは、ヤフーなどのヘッドラインとなり、あたかも事実であるかのように拡散された。

筆者は交差点に面したビルの2階から、聴衆を撮った写真を自分のSNSに揚げた。案の定、「聴衆あまり多くない」という反応が多くあった。メディアの言う「5000人」という煽りに乗らない層がSNSの中にはそれなりに存在する。

もう一つのガッカリは、肝心の演説内容である。

進次郎氏の前に話した地元の議員らも含め、「自民党を変えます」の繰り返し。自民党が変わろうが変わらなかろうが、多くの国民にとってどうでもいい。「日本がどうなるか」を語るべきなのだが、それは一切語られない。

真打ちの進次郎氏の短い演説も、「日本を変えます」「聖域なき構造改革」「仲間を集う」という、空疎なフレーズの繰り返しだった。そのためか、進次郎氏の訴え一つ一つへの聴衆からの拍手歓声はなかった。

交差点を通りかかった若い人らは一応、進次郎氏にスマホを向けて写真は撮るものの、「セクシーの人だよね(笑)」「大したこと言ってないね」など冷ややかな反応が少なくなかった。

聴衆の「数」に関する話題をまいて「風」を起こそうという古典的な手法に頼る人たち。しかも、国民をうならせる演説の一つもしない人たちが、一体何をどう変えられるというのか。

わが日本保守党は他党の関係者らからよく、「演説でいくら良いことを言っても実行力がなければ意味なし」などとバカにされる。国会議員がいない今のわが党に実行力がないのは確かだが、演説の内容、聴衆の熱気では進次郎氏らに圧勝できると自信を得た。

「再エネ賦課金」やめてみては?

思えば、進次郎氏の父、小泉純一郎元首相のキャッチフレーズは「聖域なき構造改革」だった。「痛みを伴う改革」とも言っていた。

その結果、日本はどうなったのか。残ったのは「痛みと傷」ばかりではないのか。小泉父の頃から今般の総裁選まで、「改革」「改革」と言い続ける自民党の皆さんに一つ重大な提案をしたい。

最大の改革は、あなた方、自民党がやっている「誤った政策」をやめることではないですか。小泉進次郎さん、例えば「再エネ賦課金」やめてみてはどうでしょう?

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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