日銀は24日の金融政策決定会合で、政策金利を0・25%引き上げた。本コラムでは「前のめり」と指摘したが、その通りだった。
決定理由について、植田和男総裁は「わが国の経済・物価は、これまで『展望リポート』で示してきた見通しにおおむね沿って推移しており、先行き、見通しが実現していく確度は高まってきている」としている。はっきりいって、よく分からない。
展望リポートでは「各政策委員は既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については、先行き政策金利が緩やかに上昇していくという市場の織り込みを参考にして見通しを作成している」と書かれている。奇妙な文章だ。政策金利は日銀が決めるにもかかわらず、市場の織り込みを参考としているというのだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)のように将来の政策金利の見通しを示した上で経済見通しを出すのであれば話は分かるが、なぜ日銀は将来の政策金利の見通しを言わないのか。そんなあやふやな展望リポートに基づき、リポート通りだからといって利上げすると言うのは全く筋が通らない。
そもそも日銀が将来の政策金利の見通しを言わないのであるから、市場でも予想のしようがないわけで、ピンからキリまでになるだろう。
こうした不透明な日銀の金融政策は、金融政策の予測可能性を著しく損なっている。
その一方、リークは激しい。案の定、今回も日銀からのリークらしきマスコミの利上げ報道があった。安倍晋三・菅義偉政権ではリークは全くなかったが、岸田文雄政権で復活し、石破茂政権ではさらに激しくなった感じだ。
結果として、あやふやな理由で、日銀からとおぼしきリークだけで利上げした印象だ。
本コラムで指摘したが、24日は通常国会の初日だった。普通なら日銀は遠慮するはずだが、石破政権の下では、やりたい放題なのだろう。
いずれにせよ、一部にリークするのはアンフェアである。リークの代わりに、日銀としては政策金利の今後の見通しを展望リポートの中で公表すべきである。そうしないとリークを受けた一部の人だけが早耳で利益を得たり、どの程度まで政策金利が上がるのか分からないので、市場が疑心暗鬼になったりするというデメリットになってしまう。
本コラムにおいては、政策金利は2%まで上がるとしてあと7回程度の利上げを想定していた。これを年ベースに直せば2、3回程度である。早くも今年は1回目が行われたので、あと2回程度の利上げに備えなければいけない。
学界もマスコミも政策金利の将来見通しがないことを指摘しない。産業界にとっても、政策金利の将来見通しがないことは、事業計画を立てるにあたって支障になるだろう。
2013年からのインフレ目標により、それまでの日銀より、金融政策の予測可能性はかなり高まったが、まだまだ改善の余地はある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)