なんとなくそんな予感はしてましたが、米大統領選でトランプ氏が勝ちましたね。
この原稿を書いているのは日本時間7日朝。当初この時間には、まだどちらが勝ったか結果は出ないといわれていましたが、早々とトランプ氏の勝利が確定しました。
そのことの良しあしとかいろんなことは置いておくとして、テレビ制作者としてひとつ思うのは、やっぱり「映像に映ったときにインパクトがあって、演説が面白い人は選挙に強い」というのは確実に言えそうですよね。この間の日本の衆院選でもそう思いました。
いまや多くの人は「頭が良さそうな人より、分かりやすいことをいう親しみが湧く人」という価値基準で人を選ぶのだということは間違いなさそうです。業界でいう「キャラが立っている人」というやつですね。
さて、日本政府もどうやってトランプ政権と向き合っていくのかが、これから問われますが、日本のテレビ業界もいろいろと「トランプシフト」を取らなければならない気がします。まず、個人的に気になるのが「アメリカでの取材体制をなんとかしないと」ということですね。
最近では大谷翔平選手らの大活躍で、日本のプロ野球よりアメリカのメジャーのほうがニュースとして連日大きく扱われるようになったため、各局ともアメリカの特派員はすでに異常に忙しい状況です。それがトランプ政権になればアメリカの一挙手一投足が大きく世界中に影響を与えそうで目が離せません。なので在米特派員の負担は一層増え、キャパをはるかに超える事態になります。
いっそ大量に人員を派遣して、向こうで編集してスタジオを開いてアメリカ発の日本向けニュース番組を制作してしまっても良いのではないか、と思いますね。結構ニーズがあるんじゃないでしょうか。
日本のテレビ関係者がアメリカに移民する時代になれば面白そうです。ギャラも向こうのほうが高そうですし…、あ、生活費も高いですかね(笑)。
あと思うのは、経済ニュース番組を各局もっとやったほうがいいということですね。経済ニュースが少なすぎです。これまでなんとなく経済ネタは視聴率がとれないし「テレ東に任せとけばいい」みたいな感じになってました。テレビ業界人ってあまり経済問題とかよく分かってませんから、避けてきた。
やっぱり経済をちゃんとやらないとまずいです。トランプ勝利の裏にも、自民党大敗の裏にも、経済の問題が大きく影響しているのは間違いないですもんね。
■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。