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ニュースの核心 自民党総裁選 高市氏、小泉氏、小林氏の3氏を軸に展開か 信頼回復へ誰もが「あっと驚く」候補必要、能力の評価は別

zakzak by夕刊フジ 2024年8月24日 10時0分

自民党総裁選(9月12日告示、同27日投開票)は大乱戦の様相だ。石破茂元幹事長(67)は24日、河野太郎デジタル相(61)は26日、林芳正官房長官(63)は27日、高市早苗経済安保相(63)は来週、小泉進次郎元環境相(43)は来週後半にも出馬表明する方向で調整に入った。岸田文雄政権で失墜した「政治への信頼」「自民党への信頼」を取り戻し、国民の生命と財産を守り抜くリーダーは誰なのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が考察した。

自民党総裁選が事実上、スタートした。候補者が出そろってはいないが、若手のダークホース、小林鷹之前経済安保相(49)と小泉氏、それに高市氏の3人を軸にした戦いになるのではないか。

なぜ、そう思うか。

総裁選で投票できるのは、自民党員と党所属の国会議員たちであって、一般国民ではない。従って、いくら国民の間で人気が高くても、自民党内で有力かと言えば、必ずしもそうとは言えない。ときに、民意とズレた総裁が選ばれたりする。

ところが、である。

今回は事情が異なる。岸田首相の下で、自民党政権の人気は地に落ちた。9月の総裁選の後、10月に衆院解散、11月に総選挙があれば、下手をすれば政権から転落する可能性すら現実味を帯びている。「よもや、そんな事態は起きない」と考えるのは甘い。

安倍晋三元首相がよく口にした言葉だが、「自民党は3割の岩盤保守層が支えている」。その岩盤が音を立てて崩れ落ちているからだ。「自民党王国の崩壊」は、決して絵空事ではない。

そんな危機感を自民党員が共有しているなら、どうやって支持をつなぎ止めるか。秘策は1つしかない。誰もが「あっと驚く」候補を総裁に迎えるのだ。「なるほど、これなら増税メガネとは違う」と思わせる候補である。

それは、どんな候補か。

1つは女性である。

女性では、高市氏と上川陽子外相(71)、野田聖子元総務相(63)と3人の名が挙がっているが、高市氏が頭1つ以上、抜け出ているのは間違いない。とりわけ、自民党が失いつつある「岩盤保守層」に支持者が多いのは、彼女の強みだろう。

もう1つは、若さだ。

11人とも12人とも言われる乱立気味の候補者のなかで、40代の小泉氏と小林氏の2人は群を抜いて若い。政治家の評価は「若ければいい」という話ではないが、今回は別だ。多くの国民は既成の自民党政治家に、これまで以上にウンザリした思いを抱いている。

そのあたりを自民党員と国会議員は分かっているだろうか。私は「案外、分かっている」と思う。危機における常識感覚こそが、自民党という政党のしぶとさなのだ。

そんな「逆バネ」を効かせて、自民党は何度も瀕死(ひんし)の状態から生き延びてきた。森喜朗政権の後、「自民党をぶっ壊せ」のスローガンとともに登場した小泉純一郎元首相が典型である。

そうした視点で眺めれば、残念ながら、石破氏や林氏、茂木敏充幹事長(68)、加藤勝信元官房長官(68)ら他の候補者は、いずれも「古い政治家」だ。「刷新された感」がない。「河野氏は違う」と思う人もいるだろうが、普通の国民から見れば、いやいや、要職を重ねた河野氏も十分に「既成の政治家」である。

以上は、あくまで「自民党のサバイバル術」でみた総裁候補の優劣にすぎない。能力に対する評価は別だ。

例えば、一躍「希望の星」扱いをされている小林氏について言えば、私はかなり懐疑的だ。彼は「タカ派」かもしれないが、経済政策は財務省路線だろう。それと悟られないように「言葉を選んでいる感」がにじんでいる。小泉氏に至っては、雲をつかむようで、まったく分からない。

高市氏は比較的、明確だが、岩盤保守層からどこまで支持を広げられるか。戦いは始まったばかりだ。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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