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歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡 中森明菜、異色の〝ドラマ仕立て〟に高評価も 2003年のシングル「Days」で1人4役のPV制作

zakzak by夕刊フジ 2024年8月6日 11時0分

14年ぶりにカムバック出場した2002年大みそかの「第53回NHK紅白歌合戦」を無事に終えた中森明菜だったが、03年の本格的なスタートはシングル「Days」(4月30日)だった。明菜にとっての新曲は「The Heat~musica fiesta~(ザ・ヒート~ムジカ・フィエスタ~)」以来、実に1年ぶり。通算42枚目のシングルである。

当時を知る音楽関係者は「その2週間後(5月14日)に発売されたオリジナルアルバム『I hope so~バラード・アルバム~』の先行シングルでしたが、ユニバーサルミュージック移籍第2弾ということで明菜なりに余裕も出てきたのでしょう、特に話題になったのはプロモーションビデオ(PV)でした。明菜自身が企画と原案ばかりか衣装もプロデュースし、さらに主演するという1人4役に初チャレンジしたものでしたからね」と振り返る。

明菜自身も「私を応援し続けてくれたファンの人たちが喜んでくれるのだったらという思いで企画しました」と意欲を見せていた。

「明菜自身がミステリードラマ好きなのでしょう。PVの内容も7つの殺人事件を題材にしたと言っていました。撮影現場では細部に渡って自らチェックしたそうですから、ストイックで完璧主義の本領発揮ということでしょう。歌手だけではなく、ドラマでも才能を発揮してきた明菜ですから、見られ方には人一倍のこだわりがあったのだと思いますよ」(前出の音楽関係者)

しかし、PV制作は二転三転だったという。ただ、「Days」は明菜(作詞)が、ヒットメーカーの織田哲郎(作曲)とのコンビで初めて手がけたもので、しかもアレンジはベストアルバム「Akina Nakamori~歌姫ダブル・ディケイド」(02年12月)をプロデュースした武部聡志氏。さらにテレビ東京系の2時間ドラマ「女と愛とミステリー」のエンディングテーマに起用されることも決まっていた。それだけに「新曲に対して気合が入っていましたね」(先の音楽関係者)という。

「実はバラード調の作品だったこともあって、当初ユニバーサルの制作担当者は明菜のイメージに合ったPVを考えていたようです。ところが『ドラマ仕立てのPVにしたい』と明菜が言い出したので大慌てになったそうです。確かに自身の作詞なので、PVにもイメージするところがあった。で、単なる映像作品では面白くないと無理を承知で言ったのだと思いますよ。ただ制作日程はもちろん、それ以上に先立つもの(予算)がありますからね。さすがに現場では判断がつかず、結局は(明菜の育ての親としても知られた)寺林(晁)さんの『俺が責任を持つ』のツルの一言で決まりました。寺林さん自身は『明菜の健在ぶりをアピールできる』と喜々としていましたよ。明菜自身の意気込みを優先したのだと思いますね」(前出の音楽関係者)と振り返る。

明菜の考える「7つの殺人事件を題材にしたもの」とは一体、どのようなストーリーだったのか。それは「ミステリー作家の明菜が部屋で新作を書いていると突然、目の前が真っ白になった。気がつくとそこは明菜が手掛けていた新作の世界。そのことに気づいた明菜は何かを思い出したかのようにある家にたどり着くが『遅かった…』と漏らす。小説の内容通りに第1の殺人事件が起こっていたのだ。明菜が描いていたのは7つの殺人事件。しかし実際に書いていたのは6つまで。7つ目の事件。最後の被害者は明菜自身だった…」というものだった。

明菜はもちろん、ミステリー小説の「作家」役での出演。「ある意味で異色なサスペンスドラマでしたが、PVとしては評価が高かったと思いますね」(前出の音楽関係者)

ちなみにPV制作はスケジュールの調整がつかず、新曲発売の直前の4月中旬に撮影が行われたという。 (芸能ジャーナリスト・渡邉裕二)

■中森明菜(なかもり・あきな) 1965年7月13日生まれ、東京都出身。81年、日本テレビ系のオーディション番組「スター誕生!」で合格し、82年5月1日、シングル「スローモーション」でデビュー。「少女A」「禁区」「北ウイング」「飾りじゃないのよ涙は」「DESIRE―情熱―」などヒット曲多数。NHK紅白歌合戦には8回出場。85、86年には2年連続で日本レコード大賞を受賞している。

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