米大統領選で共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が勝利したことを受けて、6日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日比1508・05ドル高の4万3729・93ドルと最高値を更新した。前日の日経平均株価も1005円高と市場は「歓迎」した。ただ、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の政策が日本経済に与える影響は小さくない。
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外国為替市場の円相場は、トランプ次期政権がインフレ対策として利上げを進めるとの見方から1ドル=154円半ばまで円安が進んだ。
だが、トランプ氏は前回政権時、中国の通貨安を問題視し、「為替操作国」に指定した経緯もある。米国の製造業の輸出が不利になるドル高を放置しない可能性もある。
6日の米市場では、トランプ氏を支援した実業家のイーロン・マスク氏が率いるテスラ株が急騰した。ただ、トランプ氏は、電気自動車(EV)の販売促進政策の廃止を公約している。民主党のジョー・バイデン政権が進めてきた気候変動対策を「グリーン詐欺」と批判しており、化石燃料重視への回帰が予想される。「脱炭素」を進めている日本も対応を迫られそうだ。
トランプ氏はまた、米国への全輸入品に10~20%、中国からの輸入品には60%の関税を課すと訴えている。日本の2023年の国・地域別輸出額は米国が全体の2割を占め、中国を抜いてトップだった。トランプ氏が日本製品への関税引き上げを実行すると、打撃は避けられない。丸紅経済研究所の今村卓社長は「自動車の対米輸出は相当減る」との見通しを示す。
日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画にも強く反対しており、今後、買収阻止に動く可能性がある。
バイデン政権が主導した日米など14カ国が参加する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の破棄も懸念される。
さらに、トランプ前政権と交渉し、2020年に発効した日米貿易協定の行方を不安視する声も上がる。
日本は当時、自動車への追加関税発動を回避した経緯がある。日本政府関係者は「前回は農業分野で譲歩したが、再協議となれば有利に進める手が見当たらない」と懸念を示した。