【パリ(フランス)9日(日本時間10日)=山戸英州】ボクシング女子で性別を巡る騒動の渦中にいる66キロ級のイマネ・ヘリフ(アルジェリア)が、ローランギャロスで行われた決勝で楊柳(中国)を5―0で破り、金メダルを獲得した。性別適格検査で国際ボクシング協会(IBA)から失格となるも、五輪出場が認められたヘリフ。彼女の五輪は終了しても、世界中で巻き起こった性別騒動のバトルは収まる気配がない。
試合開始2時間前、本紙記者が会場最寄り駅に着くと路上で「チケットを譲ってくれ」とアルジェリア人サポーターとみられる複数の男性から声をかけられた。国を背負うヘリフを応援する親子ファンに性別問題について話を聞こうとすると、「出場が決まっているのに感情を逆なでするのか!」と記者の胸ぐらをつかみヒートアップ。たまたま居合わせた警官の仲裁で、事なきを得たが、危機一髪だった。
会場内にはアルジェリア国旗を持った観客がつめかけ、試合が始まるや、「イマネ! イマネ!」と大合唱、楊が優勢に立つと大ブーイングを飛ばした。
場内の空気にも後押しされて圧勝したヘリフ。
メダリスト会見では性別に関する質問が集中し、「(五輪への)参加資格を十分持っている。私は他の女性と同じ。疑いの余地もない」と強調。SNS上で誹謗中傷が相次いでいることに「人はイジメをしてはいけない」と訴えた。
最後に「アルジェリアの人は、私の応援のために来てくれて世界へメッセージを送ってくれた」と結んだ。