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エンタなう ヒトラーの「南米逃亡説」から着想、2人の巧みな演技に…名優対決の緊張感 映画『お隣さんはヒトラー?』

zakzak by夕刊フジ 2024年7月29日 6時30分

世紀の蛮行を犯したヒトラーがもしも生きていたら。そして、もしも隣人だったら…。映画「お隣さんはヒトラー?」(公開中)は、着想自体が荒唐無稽に思えるが、2人の〝隣人〟による巧みな演技に、ひょっとして? と惹きつけられる。

終戦から15年、1960年の南米コロンビア。古びた家で気難しい老人ポルスキーが余生を過ごしている。家族全員をナチスに殺され、ホロコーストを生き延びたポーランド系ユダヤ人。妻が生前愛した、黒バラの手入れを日課にしていた。ある日、空き家の隣家に高齢のドイツ人男性が引っ越してきた。飼い犬に黒バラを荒らされ、猛抗議に行くと、男性のサングラスがずり落ち、鋭い眼光から雷に打たれたような衝撃を受ける。それはヒトラーの青い瞳そのものだった。

ポルスキーは癇癪(かんしゃく)持ち、絵画好き、左利きなどヒトラーとの共通点を1つずつ洗い出し、ヒッチコックの「裏窓」のように隣人の監視を始め、大使館に訴えるが…。

下敷きは自殺したヒトラーの南米逃亡説。ナチス戦犯が南米で潜伏生活を送った史実もある。それ以上に、ポルスキー役のデヴィッド・ヘイマンと、隣人役のウド・ギアによる名優対決の緊張感が、終盤に向かうにつれて、物語にダークなユーモアを醸し出す。ヒトラーが好んだブルックナーの交響曲が流れる中、チェスを囲む2人が、少しずつ心の手の内を探り合う描写などスリルにあふれている。 (中本裕己)

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