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肉道場入門! 特殊な仕事が求められる内臓肉、マルチョウは「焼き」が肝心 焼き目の深さ、脂の落とし加減をどう調整するかが腕の見せどころ

zakzak by夕刊フジ 2024年10月15日 6時30分

絶品必食編

焼き肉店には正肉からホルモンに象徴される内臓肉まで無数のメニューがある。そこには分割から隠し包丁までさまざまな仕事があるが、とりわけ内臓類には特殊な仕事が求められるものが多い。

なかでも、関西発祥と言われる〝マルチョウ〟は他のどの肉の仕込みにも似ていない。他の肉は正肉もホルモンも平らに開かれているが、マルチョウだけはコロコロとした円筒状に切り出されていて趣が異なる。

同じ小腸の別名であるコプチャン、ホルモンなどとは見た目に加えて焼き方も異なる。

焼き肉店におけるロースやカルビなどの正肉は厚みや形によって焼き方が変わる。店側には正確な切り出しが求められる。

一方、ホルモン類は鮮度と洗いが重要だ。店に求められるのは、まず鮮度いいのものをきっちり洗うこと。個体によっては臭みを伴った内臓肉を、いい香りのホルモンへと進化させるのに必要なステップだが、マルチョウはそれに加えて、さらなる仕事が必要となる。

食べる側には意外と知られていないが、マルチョウには腸を裏返すという工程が入る。

そもそもホルモンの味わいとして象徴的な脂がついているのは腸壁の内側ではなく外側だ。

筒状の長い小腸を裏返すことで、コプチャンやホルモン、ホソと言われるものがマルチョウに生まれ変わる。コプチャンなどは脂が直接口内の粘膜に触れるが、マルチョウはまず腸壁の弾むような弾力が口に触れる。

そこでグッと噛むと腸管の内部(本当は外部だった脂)がぎゅっと縮こまって口の中へと放出される。あとは弾力あふれる腸壁と脂を口内調味で食べ進めていく。

そのためにもっとも重要なのが「焼き」だ。といっても、脂がむき出しのコプチャンほどには難しくない。表面の腸壁の水分を抜きながら、焼き目をつけ、その過程で内部の脂をじわじわと抜きながら温めていくのだ。

仕上がりはもちろん好み次第だが、マルチョウ表面の腸壁がバリッと焼けていることと脂の中心まで温まっていることは最低条件。その上で、焼き目の深さと脂の落とし加減をどう調整するかが腕の見せどころだ。

どうぞ本日もいい焼きに仕上がりますよう! (火曜日掲載)

■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しい。新著「教養としての『焼肉』大全」(扶桑社刊)発売中。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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