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帰省・旅行どうする〝厳戒1週間〟南海トラフ巨大地震、初の臨時情報 太平洋沿岸で大津波の可能性も 今すべき「対策」とは

zakzak by夕刊フジ 2024年8月9日 12時1分

8日に宮崎県南部で発生した震度6弱、マグニチュード(M)7・1の地震を受け、気象庁は南海トラフ巨大地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとして、初の「臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。最大規模の地震が発生した場合、関東から九州の広範囲で強い揺れ、関東から沖縄の太平洋沿岸で高い津波が想定されるとして、1週間程度の注意を呼びかけた。南海トラフ巨大地震では、津波被害を中心に最悪のケースで死者・行方不明者が32万3000人、経済的な被害は220兆円と想定される。お盆休みと重なるなか、帰省や旅行に出かけて大丈夫か。具体的にどんな備えをしておくべきなのか。専門家に聞いた。

南海トラフ初の臨時情報

総務省消防庁は南海トラフ巨大地震の防災対策推進地域に指定されている29都府県707市町村に対し、避難態勢の準備などを住民に呼びかけるよう求める通知を出した。

地震と南海トラフ地震との関連を調査した評価検討会の平田直会長は8日の記者会見で、過去の世界の地震の統計から、今回と同規模以上の地震では、7日以内に再び大規模地震が発生した例は数百回に1回あり、平常時より発生する可能性が数倍高いと説明した。「今回起きた地震は想定震源域の南西の端だが、必ずしも西側だけで起きるわけではない」とも述べた。

南海トラフ巨大地震は、駿河湾から日向灘沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って発生するとされる。震源域では100~150年間隔で大きな地震が繰り返されており、「M8~9級の地震が30年以内に発生する」と想定している。

静岡県から宮崎県にかけての一部で震度7、隣接する周辺の広い地域では震度6強~6弱の強い揺れが想定されるが、最も懸念されるのが津波による被害だ。

12年に政府の中央防災会議は、高知県黒潮町と土佐清水市で34メートル、静岡県下田市で33メートルの津波が襲う恐れがあると公表した。関東から四国の23市町村で20メートル以上、静岡、和歌山、徳島、高知、宮崎県の沿岸部の大半で10メートル以上の津波が想定されている。

政府は同年、津波による被害を中心に、人的被害が最大32万3000人との想定を公表した。その後、当初より耐震化や津波避難施設、防潮堤の整備が進んだとして、想定死者数は大きく減る見込みだが、それでも深刻な被害が懸念される。

災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は「海岸近くの住民はまず一時的な安全確保のためにハザードマップや避難場所の位置や、最短経路、非常時の家族の集合場所などを再確認することが重要だ。知人や親類と連絡をとっておき、海岸から離れた2次的な避難先を確保する準備も大切だ」と指摘する。

臨時情報では、事前の避難までは求めていないが、日頃よりも警戒レベルを上げることを求めている。首相官邸ホームページによると、飲料水は1人1日3リットルが目安。米やビスケット、乾パンなどの非常食、ティッシュペーパーやマッチなどの日用品を1週間分用意する。夏場は熱中症の恐れもあるため、水は多めに用意することが望ましい。

使用しない家電のプラグを抜いておく

家具は転倒を防ぐため壁に固定する。倒れた場合に出入り口をふさがないよう、向きや配置を工夫する。割れたガラスなどでけがをしないようスリッパや靴を近くに準備するほか、懐中電灯、救助に来た人に自分の位置を知らせる笛も重要だ。

元麻布消防署署長の坂口隆夫氏は「まずは自宅の耐震性を再確認する。家具の転倒防止対策に加え、棚の上の物を別の場所に移動しておくのも手だ。家屋の部分倒壊でもプラグやコードの損傷で火災に至る恐れがあるので、使用しない家電のプラグは抜いておくべきだ」とアドバイスする。

災害危機管理アドバイザー和田氏「移動を控える必要はないが備えを確認するのは重要」

「1週間」の注意期間はお盆休みの行楽、帰省シーズンと重なる。東海道新幹線は一部区間で徐行して運行するが、巨大地震が発生すれば、交通網への影響も大きい。

モバイルバッテリーの携行を

前出の和田氏は「今回の事態で移動を控えるべきとまではいわないが、普段から備蓄をしている人は意外に少ないので、改めて備えを確認するのは重要だ。まず自家用車の中には非常用のトイレと多めの水や、非常食、スマートフォンを充電できる非常用電源などの器具を積んでおくべきだ。長期間保存しても変質しないものを常に車に積んでおけば、車中避難や車中泊を余儀なくされても役に立つ。公共交通機関の移動でもモバイルバッテリーなどを携行するのが重要だ。消毒液や常用薬などの医薬品を持ち歩くことや枕元に持ち出し袋を置いておくことも重要だ」と語る。

1週間を過ぎれば安心というわけでもない。1週間は社会的に許容できる期間として定めたもので、科学的根拠があるわけではないためだ。

前出の平田会長は「巨大地震は十中八九、前触れなく起きる。(可能性は)平時から高い」としている。

いまからでも備えを急ぐべきだ。

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