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ニュースの核心 米新大統領誕生まで〝空白6カ月〟がヤマ場 暴発に警戒、中露が狙う軍事的な既成事実化 ウクライナと台湾の危険度上昇

zakzak by夕刊フジ 2024年7月27日 10時0分

ジョー・バイデン米大統領(81)は24日(日本時間25日)、ホワイトハウスの大統領執務室から「新しい世代にバトンを渡すことが最善の道だと決断した」と演説し、推薦した民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)を称賛した。一方、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)は、副大統領候補のJ・D・バンス上院議員(39)とともに選挙キャンペーンを本格始動させた。一部の世論調査では、ハリス氏とトランプ氏の支持率が拮抗(きっこう)している。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、米国が分断・混乱するなか、ロシアと中国の暴走によるウクライナや台湾の危険度上昇と、岸田文雄首相の存在感低下を懸念した。

バイデン大統領が選挙戦から撤退し、代わりにハリス副大統領を候補に指名するよう推薦した。米民主党の「統治能力のなさ」を象徴するような事態である。

そんな民主党政権に付き従っていた日本の岸田政権にとっても、大きな誤算だ。世界が揺れ動くなか、自ら国の平和と繁栄を構想できないような政権には、とても日本の将来を任せられない。

バイデン氏の認知能力の衰えは、何年も前から指摘されていた。言葉の言い間違いは数知れず、最近では、よく知っているはずの人に会っても、思い出せないケースもあったという。側近たちは当然、分かっていたはずだ。

撤退論は早くから出ていた。例えば、昨年9月12日付のワシントン・ポストは「バイデン氏は2024年に立候補すべきではない」という著名コラムニストの記事を掲載した。「大統領が必ず目を通す」と言われているコラムだ。

にもかかわらず、大統領選が3カ月後に迫ったいまになって、撤退せざるを得なくなったのは、本人もさることながら、大統領を説得しきれなかった民主党の責任だ。しかも、対抗馬である共和党のトランプ前大統領が狙撃された直後というタイミングだった。

結果として、トランプ陣営にこれ以上はないエールを送ったうえで、最後はコロナにも罹患(りかん)し、支持者から見放された形で退場することになった。まさに「惨めな退場劇」と言わざるを得ない。

心配なのは、ロシアと中国の出方だ。

トランプ氏は、ウクライナ支援に消極的で「クリミア半島と東部4州の奪還をあきらめても、ロシアと停戦を目指すべきだ」という立場である。それなら、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は停戦前に「できるだけ領土を奪ってしまえ」と考えるだろう。

つまり、これから11月の大統領選まで、その後はトランプ氏が勝利するなら、来年1月の大統領就任前までがヤマ場になる。ロシアは既成事実を積み上げたいのだ。

中国も同じだ。

トランプ氏が副大統領候補に指名したバンス氏は、かねて「米国はウクライナ支援を止めて、台湾防衛にもっと力を入れるべきだ」と主張している。中国とすれば、トランプ政権が誕生する前に「台湾に対する軍事挑発を既成事実化してしまえ」と考えてもおかしくない。

台湾海峡とその上空は、中台のさや当てが激化して、一段と緊張するだろう。

最低限の礼儀も知らない岸田首相

情けないのは岸田政権だ。

岸田首相はバイデン撤退の報を聞くと、首相官邸で「大統領として政治的に最善の判断をする、そういった思いでの判断であると認識いたします」とコメントした。

正しい日本語になっていないが、大統領が断腸の思いで下した判断について「最善の判断だ」などと語るのは、「上から目線」を通り越して、政治家として最低限の礼儀もわきまえていない。

ここは過去の業績を称え、友情に感謝する局面ではないか。大統領は「子分のお前に『最善だ』などと言われたくない」と思ったに違いない。岸田首相のセンスのなさがにじみ出てしまった。

トランプ政権が誕生すれば、バイデンべったりだった岸田首相が相手にされないのも、また明白である。バイデン政権に強要されて、成立させたLGBT理解増進法の見直しも必至ではないか。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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