衆院選で日本維新の会は、地元の大阪では強さを見せたが、全国的には伸び悩んだ。今後、どのような戦略をとるべきなのか。
立憲民主党は公示前の98議席から148議席に、国民民主党は7議席から28議席に、れいわ新選組は3議席から9議席とそれぞれ大躍進だった。共産党は公示前の10議席から8議席と若干の減少だったが、維新は44議席から38議席となり、野党では「独り負け」といえる。
党勢が反映されやすい比例票について、今回と前回2021年の衆院選との比較で分析してみよう。今回の全体の比例票は約5454万票で、前回の約5746万票より約292万票減った。
党派別では、自民が約533万票減らしたほか、公明が約114万票、維新が約294万票、共産が約80万票減少させた。
一方、国民民主が約357万票、れいわが約158万票増やした。参政党が約187万票、日本保守党が約114万票獲得している。
自公維の減少分約940万票は、それらより右の参政・保守に約300万票、中道の国民に約360万票流れ、その他の約280万票は投票減となったのだろう。
左派系でもちょっとした変動があり、れいわは共産などから票を獲得して票を増やしたように見える。意外なようだが、立民はほとんど比例票は増やしておらず、小選挙区での自公の自滅で漁夫の利を得て、議席数を伸ばした。
こうしてみると、維新は自公の自滅の受け皿になれず、好機を逸した。大阪の小選挙区では全勝したが、それ以外の地域で伸び悩んだ。
比例票は全国で300万票近く、お膝元の近畿ブロックの大阪でも約56万票も減らしている。盤石といわれた大阪でもこのありさまだ。
政策面をみると、維新と国民民主では似ているところが多い。しかし、イメージとして、「政治とカネ」の問題などで維新が自公と近いように感じられ、自公とともに得票数を下げてしまったのではないか。維新の内輪もめのような雰囲気も有権者の失望を招いたのだろう。
維新が自公と差別化した政策をきちんと打ち出していれば、自公が減らした約650万票について、維新と国民民主が合計約350万票を奪い、残りの「岩盤保守層」の約300万票について参政と保守が奪っていたとも考えられる。
こうしてみると、維新が復調するためには、国民民主寄りの中道政策か、参政・保守のような右寄りの政策をしっかり打ち出すほうがいいだろう。いずれにしても、自公とは違うことがはっきり分かる形でのアピールが必要だ。
政策が似ている国民民主に票を持っていかれた維新だが、逆にいうと、国民民主のやり方をみれば、政策で勝負して得票数を増やせるともいえる。大阪などでミクロの地方行政を知っているのが維新の強みなので、それを生かして自公との差別化をすればいい。それに雇用などのマクロ経済を加味すれば、復調する可能性はまだあるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)