沖縄県の那覇市辻は、現在も30店舗近いソープランドが軒を連ね、沖縄の性産業の中心となっているエリアだ。
戦時中に空襲で焼失するまでは遊郭としてにぎわい、戦後も沖縄での売春防止法施行が一部で始まった1970年以前は多くの売春婦がいた。いまでも県内で唯一、合法的な風俗営業が許可されている区域だ。しかし「近年、沖縄の〝本番〟店はもうからない」と語る地元関係者は少なくない。
「真栄原社交街やコザ吉原が壊滅して以降、沖縄の〝本番〟店の需要は衰退の一途をたどっています。辻のソープランドでは部屋単位で家賃が設定され、1部屋は月10万円が相場。5部屋借りると50万円。求人広告や宣伝費も入れれば月150万円程度がかかります」
関係者はそう嘆く。ソープランドの客単価は2万円前後。女性の給与は約1万円で、その上、案内所を通した場合には6000~7000円が引かれるため、純利益は2000~4000円ほど。黒字を維持するには月に250人以上の集客が必要だという。
沖縄にはかつて宜野湾市の真栄原社交街や沖縄市のコザ吉原といった青線地帯が存在していた。置き屋のオーナーによれば、当時の置き屋は1棟200万円程度で購入できた。15分ごとの料金設定で店側に入る利益は15分あたり約2000円。旅行者が増える時期は1日30人近い集客も見込めたため、わずか1カ月で初期投資を回収できるビジネスモデルだった。
こうした高収益の置き屋と比較すると、ソープランド経営は必ずしも「オイシイ」ものではない。地元住民が複数人で店舗を買い取り営業する特殊浴場も見られるが、近年は辻で営業していたオーナーが店舗を手放すケースも増えており、10年前に比べて店の数は5~10軒減少したという。
さらに、辻の衰退に拍車をかけているのが、ここ数年で急増しているメンズエステの存在だ。関係者によると「店舗代や広告費が安価で、60分のサービスで得られる利益は女性の給与を差し引いても5000円前後と、ソープランドに比べて収益性が高い」という。
さらに、メンズエステは風俗営業の許可がなくても開業でき、沖縄では約98%が風俗営業禁止区域にある。〝ヌキ〟の違法サービスを行う店は、摘発されても名義を変えることで新たな店舗として営業を続けるため、県内の風俗業界にとっては忌々しい存在なのだ。
これまで沖縄の性産業を支えてきた那覇市辻のソープ街がなぜ、現在は苦境にあえぐようになったのか。次回は理由をさらに深く掘り下げたい。
■カワノアユミ 20代を歌舞伎町と海外の夜遊びに費やした元キャバ嬢ライター。現在は、国内外の夜の街の変遷や日本人の海外移住などを取材。著書に、アジア5カ国の日本人キャバクラで9カ月間潜入就職した『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)。X(旧Twitter):https://x.com/ayumikawano/