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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 〝終わりなき夏〟を求めて世界をめぐる サーフィン映画の金字塔が最新映像で公開 「エンドレス・サマー デジタルリマスター版」

zakzak by夕刊フジ 2024年7月29日 11時0分

1966年に公開され、サーフィン映画の金字塔として愛されている作品「エンドレス・サマー デジタルリマスター版」(ブルース・ブラウン監督)。最新映像でよみがえり、公開されている。

たまらない暑さに、早く夏が終わってほしいと切に思うこの頃だが、〝終わりなき夏〟を求める人たちがいる。彼らの名はサーファー。

当たり前といえば当たり前だが、世界のどこかには必ず夏がある。21歳と18歳のサーファーと監督の3人は、波を探すために、夏時間の最中にある国を転々とする旅に出る。スマホのGPS情報もない時代。ロサンゼルス空港を旅立った3人は太平洋を渡り西アフリカのセネガルに降り立つ。そこから始まる世界をめぐるサーフ・トリップ。

サーフボードをタクシーに乗せるだけで一苦労する。サーフィンを初めて見る人もいる。白人の旅行者を初めて見るというアフリカの漁村の住民もいる。

一行は波を見つけ、乗る。地元の子供たちに即席のサーフィンスクールを開催する。場所によっては沖合にサメが群れる海もある。交通路も未整備でトラクターで岬の先端を目指すこともある。

旅することが現代よりもずっと冒険を伴った時代。事前情報は少なく、デジタルの助けはない。それゆえ、たどり着いた際の喜びは大きい。

南アフリカのセントフランシス岬では、完ぺきな波、完ぺきな気候、サーフィンにうってつけのスポットを見つけた。サンゴ礁に囲まれているため、いい波が来ないとサーファー仲間に伝えられていたタヒチ(パリ五輪のサーフィン会場)では予想外のサーフスポットを発見した。

カメラも今のように水に強いわけではなかった。サーフボードもオールドスタイルだが、サーフィン未体験であっても、その楽しさや魅力が確かに伝わってくる。

難易度の高い波があるという。波との相性もあるという。命を守るために海に飛び込むこともあるという。サーフボードにしゃがみ込み続けるため、足がけいれんすることもあるという。そんなサーフィンあるあるを知ることもできた。

それ以上に心地よかったのは、夏の映画を涼しい映画館で見る、ちょっとした避暑感覚。夏は映画館にかぎる。

(演芸評論家・エンタメライター)

■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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