再登板する米国のドナルド・トランプ次期大統領は「ドル安を進めるべきだ」と発言しています。これ、難しいと思います。トランプさんの掲げる関税引き上げを導入すると、輸入品の価格が上がってインフレを再加速させることになります。また、移民の流入制限で労働力が低下し、サービスやモノの提供が追いつかなくなって、やはりインフレが進みます。
トランプさんの大メッセージは「ドル安」と「物価を下げる」ですが、個別政策との整合性が取れません。マーケットは個別政策の方に注目して、ドル高になったりしています。
一方、トランプさんの主張する法人税、所得税の引き下げが実現すると、株高になりやすくなります。海外から多くの資金を呼び込む可能性があります。短期的には米国経済にとってプラスかもしれません。
ただ、前回、トランプさんが大統領だった2018年、米中対立が激化し株価が軟調、上値が重かったことを忘れてはいけません。インフレ再加速による金利の再浮上は米国経済のソフトランディングの時期を遅らせるリスクがあります。
米国第一主義のトランプさんが大統領になることも想定し、日本株の牽引役のトヨタ自動車は以前から北米に工場の拠点を置き、関税の影響をできる限り避けるように動いてきました。ただ、高関税を課すメキシコに工場があるので、他の自動車メーカーと同様、その影響を慎重に見極める必要があります。
日本国内に工場がある自動車部品企業は関税の影響をダイレクトに受けます。ほかにも、汎用半導体の製造装置メーカーの中には中国向けが5割を占めるところもあり、戦略の転換が求められます。
三菱UFJなど物色される金融株
トランプさんは液化天然ガス(LNG)の増産を打ち出しているので、日本のエネルギー業界は歓迎だと思われます。保護主義政策によるインフレ再加速の思惑から、米国の長期金利も上昇、これがポジティブな影響をもたらすということで、三菱UFJなどの金融株も物色されています。
トランプさんとはあまり関係のないところでは、今期の業績予想を上方修正したフジクラ、業績上振れに加えて400億円規模の自社株買いもする味の素、この連載でも触れたように心臓血管事業が好調のテルモも気になります。いずれも上場来高値を更新。引き続き注目です。
■おまけのひと言
「山梨でリニア実験線の体験乗車をしてきました。ほとんど揺れもなく、快適でした。ビジネス効率の向上だけでなく、インバウンド需要拡大も期待できます。内陸部の深いところを通るので、南海トラフ巨大地震の影響もないと言われています」
【財ザク!】「貯蓄から投資へ」と提言する政府。その投資で少しでも財産アップを達成するために「うまちゃん」が有益な情報をザクザクとお届けします。
■馬渕磨理子(まぶち・まりこ) 経済アナリスト。日本金融経済研究所代表理事。イー・ギャランティ社外取締役。愛称・うまちゃん。1984年生まれ。滋賀県出身。同志社大学法学部卒、京都大学公共政策大学院修士課程修了。大学時代はミス同志社。『LiveNewsα』(フジテレビ系)など出演番組多数。新刊『馬渕磨理子の金融・経済ノート』(東急エージェンシー)=写真=が話題。