産経新聞報道
埼玉県川口市に集住するトルコの少数民族クルド人をめぐり、法務省入国管理局(現・出入国在留管理庁)が20年前、難民認定申請者の多いトルコ南部の複数の村を現地調査し、「出稼ぎ」と断定した報告書が「封印」されていたとする産経新聞の報道(25日朝刊)が波紋を広げている。日本保守党の島田洋一衆院議員は26日、「事実が国民に提示されてこなかったのは問題だ」として、国会で追及していく考えを明らかにした。
産経新聞の報道によると、法務省は2004年当時、クルド人らが難民認定を求めて各地で起こしていた訴訟対応のため入管職員を派遣して実態を調べ、報告書には「いずれも出稼ぎ村であることが判明」などと記された。
報告書が法廷へ提出されると、クルド人側の弁護団が問題視し、入管側が難民申請者の氏名をトルコ当局へ伝え、現地の家族を訪問していたことなどを非難した。日本弁護士連合会は「重大な人権侵害だ」として当時の法相あてに警告書を出し、法務省は調査内容を「封印」したという。
10月の衆院選で初当選し、法務委員会に名を連ねる島田氏は「調査により明らかになっていたファクト(事実)が、『人権侵害』を理由にした日弁連の非難により長く封印されてきたとすれば問題だ。法務委員会でも追及していきたい」と述べる。
難民条約では、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々を「難民」と定義している。
島田氏は「国内在住のクルド人で、難民条約が定義する『難民』の基準に該当する人は極めて少なく、これは人道的な問題ではない。日本で働きたいというのであれば、正規の手続きを経なければならず、事実上の不法移民への対策は厳格化しなければならない」と話す。
ドイツやフランスなど欧州では不法移民対策の厳格化へかじを切る国が増えつつあり、ドナルド・トランプ次期米大統領も厳しい政策を取ることを明言している。
島田氏は「難民と主張しながら、実際は出稼ぎ目的で先進国に移住しようとする人たちへの取り締まりを強めているのが世界の流れだ。もし日本の対応は甘いということになれば、彼らが日本へどっと押し掛けることになるだろう」と懸念を示す。
日本では6月に改正入管難民法が完全施行された。3回以上の申請者は原則的に送還できるようになるなど、不法滞在する外国人の送還のルールが抜本的に見直された。
島田氏は「制度ができても、法執行がずさんなら意味がない。この問題は国会でも働きかけていきたい」と強調した。