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北方領土〝強行上陸〟か 公式訪問中のプーチン大統領、中国に続く挑発に厳重警戒 日本政府、抑止策検討も有効打なし

zakzak by夕刊フジ 2024年9月3日 11時30分

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が近く、北方領土に強行上陸する可能性があり、日本政府が厳重警戒していることが分かった。プーチン氏は2日、公式訪問先であるモンゴルの首都ウランバートルに到着した。その後、ロシア極東・ウラジオストクも訪れる予定で、さらに北方領土に足を延ばす危険が指摘されている。北方領土は日本固有の領土であり、ロシアが不法占拠している。領土返還をめぐる日露交渉の決定的打撃となりかねない。自民党総裁選(12日告示、27日投開票)を揺さぶるように、習近平国家主席率いる中国軍は先週、日本に対して領空侵犯と領海侵入を仕掛けてきた。ロシアも、岸田文雄首相や総裁候補を挑発するつもりなのか。

「(北方領土は)非常に興味深い所だという。まだ行ったことはないが、必ず訪れる」

プーチン氏は今年1月、極東ハバロフスク地方での会合でこう語り、将来的な北方領土訪問を約束した。

さらに、プーチン氏は6月、サンクトペテルブルクでの国際会議に合わせた各国通信社との会見でも、「これらの島々(クリール諸島=北方領土と千島列島のロシア側呼称)はロシアが主権を持つ領土で、(自分が)訪問しない理由はない」と語るなど、強い意欲を見せていた。

岸田政権が、ジョー・バイデン米政権などと足並みをそろえ、ロシアの侵攻を受けたウクライナへの支援を強化するなか、プーチン氏は「北方領土問題を含む平和条約締結交渉を続ける条件がない」と猛反発していた。

北方四島は1945年夏の終戦時、ソ連の独裁者、スターリンが日ソ中立条約を一方的に破って侵攻し、不法占拠した。プーチン氏の訪問が実現すれば、ソ連時代も含めて、ロシアのトップとして初めてとなる。

複数の日本政府関係者によると、今夏以降、プーチン氏の北方領土訪問が本格検討されているとの情報があり、精査を進めてきたという。

ある関係者は「実行力のある抑止策はなく、抗議するぐらいしかないのが実情だ」と明かす。

プーチン氏は2日深夜、ウランバートルに到着した。ICC(国際刑事裁判所)は戦争犯罪容疑でプーチン氏の逮捕状を出しており、ICC加盟国のモンゴルの対応が注目されたが、モンゴル政府は空港で歓待した。

プーチン氏は、日本軍とソ連・モンゴル両軍が武力衝突した「ノモンハン事件」(1939年)の勃発85年式典に出席するほか、モンゴルのウフナーギーン・フレルスフ大統領と会談する。5日にはウラジオストクで「東方経済フォーラム」の全体会合に出席し、演説する予定という。

プーチン氏が、北方領土訪問を模索する狙いは何か。

ロシアの外交・安全保障に詳しい笹川平和財団の畔蒜(あびる)泰助上席研究員は「プーチン氏の『日露関係は現状のままでいいのか』という揺さぶりだ。2022年のウクライナ侵攻以後、日本の対露政策に対するいらだちもあるだろう」と分析する。

畔蒜氏「日露関係『対話のチャンネル』維持が必要」

訪問が現実化すれば、どのような影響があるのか。

畔蒜氏は「平和条約交渉はさらに難しい段階になる。択捉島、国後島には、ロシア高官がこれまでも上陸している。ロシア側に両島を返還する意志はない。一方、歯舞群島、色丹島に上陸するなら、『歯舞群島および色丹島を日本国に引き渡すことに同意する』とした1956年の日ソ共同宣言の意義にまで立ち返ることになる。対日批判のメッセージ性がさらに強くなる」とみる。

ロシアと中国の連携を懸念する分析もある。

長崎県五島市の男女群島の南東沖上空の領空内で先月26日、中国軍機による領空侵犯が初めて確認された。同31日には、中国海軍の測量艦が、鹿児島県の口永良部島南西で日本領海に侵入した。

外交関係者は「プーチン氏は自身や国家の〝威信〟を高めたい。中国も、台湾と日本への圧力を強めたい。米大統領選が本格化し、日本では自民党総裁選が行われる。日米の政治的空白が生じうるタイミングで、露中が外交・軍事的『仕掛け』に打って出る恐れがある」と分析する。

実際、ロシアは2日、色丹島の周辺海域で、3日から長期間の射撃訓練を行うと通告してきた。ロシアは北方領土での紛争を想定し、大規模な軍事演習を頻繁に行っている。

自民党総裁選は、12日告示まで10日となり、「ポスト岸田」候補による出馬を正式表明する記者会見のピークを今週迎える。新首相となる新総裁には、中国やロシア、北朝鮮による軍事的・外交的圧力に毅然(きぜん)と対峙する能力と覚悟が求められる。単なる人気投票でリーダーを選べば、国民の生命と財産は守れない。

前出の畔蒜氏は「日本としては、米国をはじめとするG7(先進7カ国)諸国と歩調を合わせ、ウクライナ支援を継続させながらも、中長期的な日露関係を見据えた場合、別の方向で『対話のチャンネル』を維持しておく必要はあるのではないか」と語った。

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