ドナルド・トランプ次期大統領の動向が注目される中、ニッポン放送の番組でアメリカ政治を専門とする東洋大学の横江公美教授と意見交換した。
目先、中国に対して60%の関税をかけるなど極端な政策に注目が集まるが、横江教授はトランプ氏は多くの訴訟を抱え「民主党が強い司法だから『犯罪者』になったということもいえる。(再び犯罪者にならないためには)4年後も共和党政権であることが重要になる」と指摘。さらに2期目の大統領は通常ノーベル賞などを目指すとされ、「自分の名前を残すことに一生懸命になる」とみる。
つまり、あまりむちゃな政策には出ない可能性もあると、興味深い考察をしていた。私がいちばん注目しているのは、米宇宙開発スペースXや、電気自動車テスラを創業したイーロン・マスク氏をトップに起用する政府効率化省だ。マスク氏は無報酬で、予算3割削減を掲げる。本当の効率化は官僚や政治家にはできない、経営の視点で見直すのは面白いと思う。
日本の予算も私の国会議員経験からいえば無駄が3割はあり十分削減余地があると感じる。「年収103万円の壁」を引き上げると、「税収減」になるという議論は出るが、歳出削減で賄おうという話にならないのは不可思議だ。日本に政府効率化省があってもいい。
ジョー・バイデン政権はロシアにも牽制(けんせい)をきかせ、台湾も守るスタンスを明確にし、世界の安全保障にも目を配った。しかし、トランプ氏はあくまで米国第一主義だ。ウクライナや台湾を守るために、米国の税金や、軍隊を使わない可能性が大きい。ウクライナの領土の一部を、ロシアのものと認める形で、トランプ氏が戦争終結を実現させれば、それが前例となる。
次は中国の台湾侵攻だろう。トランプ氏は中国が台湾に侵攻したら関税を200%にするといっているが、私は、裏を返せば、200%の関税を織り込むなら認めるとも読める。台湾の次は尖閣諸島ということにもなりかねない。米国は日本を守るために、これまで以上の経済的負担を求めて来るだろう。防衛費や在日米軍の負担など莫大(ばくだい)な費用で、日本の財政はますます厳しくなる。いずれにしろ、ここから4年、米国経済だけが強くなり、景気が良くなり、日米金利差は開き、円安は加速するとみている。それを前提に日本企業も経営していくしかない。
そうした中、日米でワタミの寿司事業が好調だ。ラスベガスでM&Aをした「サニースシ」を横展開し、ロサンゼルスでの寿司事業の準備に入った。国内では持ち帰り寿司「銀政」を都内にオープンさせた。寿司屋と回転寿司の間にある市場を見つけた。職人による切りたて、握りたての持ち帰り寿司を強みとした。
ワタミの介護の老人ホームでも出張寿司屋を開いていた。高齢者がお寿司で笑顔になり、多くのありがとうが集まった。経営は何より「理念」が大事だ。損得だけでは長く続かない。日本の首相も米国次期大統領と「理念」で向き合ってほしい。 (ワタミ代表取締役会長兼社長CEO)