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宮崎正弘 世界大混乱・悪の論理 AI開発めぐり対中国より〝内ゲバ〟の米国 カリフォルニア州で「技術革新法案」可決、IT企業に同州から「脱出せよ」の声

zakzak by夕刊フジ 2024年7月1日 6時30分

欧州連合(EU)は、中国製の電気自動車(EV)に、最大約38%の追加関税を課す。米国は100%の制裁関税を課すから、「EUは甘い」との観測も挙がっている。フランスは「親中国」だし、ドイツはフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題で自動車業界がよろめき、中国市場に生き残りをかけている。問題は、人工知能(AI)規制である。

米カリフォルニア州の経済は「シリコンバレーで持つ」とまで言われた。テレワークにより、高い家賃を忌避したエンジニアたちは、家賃の安いテキサス州やアリゾナ州に移住した。

追い打ちをかけるように、カリフォルニア州は4月、「最先端AIシステムのための安全で安心な技術革新法案」を可決した。大規模な人工知能モデルの開発に先立ち、企業にセキュリティー保護を義務付けた。また、利用者が重大な被害に遭った場合、企業に法的責任があるとするものだ。

同州には、企業が収集した情報、収集した理由、第三者と共有する場合などに、開示を義務付ける法律がある。消費者データをより保護し、ユーザーの知らないうちに消費者データが収集・販売されるのを防ごうと動いてきた。

AI規制は、ジョー・バイデン米大統領が大統領令で行い、州レベルではカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が知事令で、厳格な安全基準を確立してきた。しかし、業界団体やカリフォルニア州商工会議所などが反対を表明している。自由な競争原理を疎外するからだ。

対象があまりにも広範囲にわたり、企業負担が大きい。それはイノベーションを抑圧することになり、スタートアップ起業やベンチャーキャピタルに不利な影響を与える可能性があるというのが反対理由である。

IT企業の中からは、「カリフォルニアから脱出しなければならない。他の州へ行くか、それとも規制のない外国か」という声が聞かれる。

他方、米実業家のイーロン・マスク氏は、米アップルの基本ソフト(OS)に、オープンAIの生成AIソフトウエアが組み込まれれば、自身が経営する会社(=テスラ、スペースX、X、スターリンクなど)で、アップル製品を使用禁止にする考えを明らかにした。「容認できない安全上の違反だ」などと、X(旧ツイッター)に投稿した。

中国への対応どころか、企業と議会が内ゲバを始めたのだ。 =おわり

(評論家、ジャーナリスト・宮崎正弘)

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