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実録・人間劇場 横浜・寿町ドヤ街編(3)壁と壁の間に人が…不動産会社社員が明かした物騒な話 事故物件検索サイト「大島てる」では4人が死亡と

zakzak by夕刊フジ 2024年12月20日 11時0分

2カ月間住んだ横浜・寿町のドヤを出て、すぐ近くにある家賃3万2000円のマンションへと引っ越した。内見時に不動産会社の社員からはこんなことを言われた。

「てっきり、生活保護を受けている方かと思いました」

マンションとはいえ、普通に働いている人が住むことはほとんどないという。広さはわずか11平米。水道光熱費を入れても4万円を下回る。住んでいるのはドヤと同じく生活保護受給者が多く、ほかには日雇い労働者と出稼ぎの外国人といったところだ。

内見に同行した社員に寿町に住んで取材をしていることを伝えると、面白がっていろいろサービストークをしてくれた。

「私が知る限りでは、このマンションの踊り場で過去に3人死んでいます。隣に建っているドヤとの間に死体が挟まっていたこともありますよ」

事故物件検索サイト「大島てる」を見てみると、私の住んでいるマンションでは少なくとも4人が亡くなっている。うち1人は飛び降り自殺と記載があったので、それがドヤとの間に挟まっていた死体かもしれない。

寿町全体も周辺地域に比べて事故物件は多い。現状、ドヤは高齢者が一人で住んでいるケースがほとんどである。その性質ゆえに部屋で病死しているパターンが中心のようだが、中には薬物中毒による死(オーバードーズ)や殺人なども起きている。

マンションの部屋にいると気がめいってくる。部屋を出て2分ほど歩いたところにある交差点に「横浜市寿町健康福祉センター」という施設がある。ここがいわば寿町の中心であり、交差点には昼夜問わず私と同じような理由で部屋から出てきた人たちがたまっていて、寿町における交流の場となっている。

交差点にあるスーパーマーケット「ダモア」で酒を買って飲んでいる人もいるが、ここにいればみんな誰かしら顔見知りに会えるので、1円も使わずに暇を潰すことができるのだ。

もうひとつ、彼らが暇を潰す際によくしているのが鳩のエサやりだ。

ある小雨の日、ほとんどの住人が部屋にこもっている中、一人だけ外に出てきている男性がいた。話し相手がいないゆえに鳩にエサをあげているのだが、何かしらの感染症が心配になるくらい鳩が密集している。

またあるときは鳩にエサをあげている男性が施設の警備員に「鳩にエサをあげないでください」と注意を受けていた。すると、男性は警備員に向かってこう怒鳴り返したのである。

「じゃあ、どこで鳩にエサをあげればいいんですか!」

警備員は困惑していたが、それほど寿町という街に住んでいると暇を持て余して仕方がないのである。

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。

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