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大人のエンタメ 巨匠が事件を新たな視点から描く 史実とフィクションを巧みに織り交ぜた 映画『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』

zakzak by夕刊フジ 2024年8月8日 15時30分

340分という長さ感じさせず

映画「夜よ、こんにちは」(2003年)で、アルド・モーロ誘拐事件を極左過激派の側から描いた伊映画界の巨匠、マルコ・ベロッキオ監督が、今度は事件を外側(政府閣僚、キリスト教民主党幹部、法王、モーロの家族など)の視点から捉え直し、新たな長編作品に仕上げた。9日公開の「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」は史実とフィクションを交えた政治ドラマで340分という長さをまったく感じさせない。

1978年3月16日朝、キリスト教民主党の党首アルド・モーロ(ファブリツィオ・ジフーニ)は新政権発足当日、極左過激派「赤い旅団」に誘拐される。与党である同党が西欧最大の共産主義政党イタリア共産党と手を組む新政権は「歴史的妥協」と呼ばれる斬新な路線を歩むはずだった。が、同路線に反対する「赤い旅団」は共産党との協力を推進したモーロを誘拐し、新政権に大打撃を与える。

政権与党入りした共産党が極左グループとの違いを明確にするため、法と秩序を守る姿勢を貫く一方、キリスト教民主党もテロに屈しない立場を堅持。モーロから救いを求める手紙が届くが、新政権は「赤い旅団」との交渉に応じない。

妻のエレオノーラ(マルゲリータ・ブイ)は夫の友人たち(キリスト教民主党幹部)の裏切りに愕然とする。55日後、放置された車の中で銃弾を浴びたモーロの遺体が発見されるが、歴史的妥協路線に暗い影を落とす。

フィクションを巧みに織り交ぜているので、映画鑑賞後、史実と照らし合わせる必要があろう。だが、映し出された映像は基本的に事実をリアルに再現。現在の欧州や日本の政治状況を深く認識する上でも示唆に富む。その点からもぜひご覧いただきたい。 (瀬戸川宗太)

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