警視庁は先月、ソープランドに女性斡旋(あっせん)を行っていた疑いで、大規模スカウトグループの幹部ら5人を逮捕した。約160人の構成員がおり、SNS上で女性を高収入の風俗業界の仕事に勧誘。プロフィルを全国約350店の性風俗店に送って報酬額を提示させる「オークション方式」で派遣先を決め、紹介料として数億円を稼いでいたとみられる。
産経新聞などによると、女性らの売春の収益の一部を受け取っていたとして今月、再逮捕された構成員の男子大学生の容疑者(21)は、「携帯1台で毎月大金を得られるので続けていた」と供述した。
SNS上では現在、こうした「風俗店を紹介します」といった投稿が横行している。街中では現在は違法となったスカウト行為が、SNS上でなら容認されると誤解している人が少なくないが、それは誤りだ。同行為を事業として行う場合は、職業紹介事業の許可を取得することが法律で義務付けられている。
さらに、性風俗店などに女性を紹介する目的でSNS上で勧誘する行為も迷惑防止条例違反にあたる。今回の事件はそうした法規制の網をかいくぐって行われていた。
元スカウトマンだった男性は次のように語る。
「最近はホストだけでなく、スカウトの悪質化も増えています。いまは、おそらく見せしめ的な意味合いもこめて摘発が強化されているのではないか。未成年や薬物トラブルが関わっていることも多い。スカウトマンが女性に大麻を売るケースもあり、未成年が補導された際に大麻を買ったスカウトマンの名前をもらし、そこから芋づる式に逮捕に至った事例もあるようです」
今月12日から一部施行された麻薬取締法および大麻取締法改正の影響もありそうだ。大麻が「麻薬」と位置付けられ、新たに使用罪が設けられたが、法改正後はさらに取り締まりが厳しくなっている可能性が高い。
一方、この元スカウトマンは、スカウトの摘発は「いたちごっこ」であるとも指摘する。
「今回のスカウトグループはSNSを使って女性を募っていたが、会社組織として活動しているグループは自社開発のアプリを利用するなどし、特定されるリスクを避ける仕組みを作っている。取り締まりが厳しくなれば、隠蔽の手口も巧妙化していくのが現実です」
今回の逮捕劇はSNSを悪用した違法なスカウト行為が深刻化している実態を浮き彫りにした。背景には女性を借金漬けにする悪質ホストや薬物中毒などの問題も絡んでおり、根本的原因の解消に向けた対策が求められている。
■カワノアユミ 20代を歌舞伎町と海外の夜遊びに費やした元キャバ嬢ライター。現在は、国内外の夜の街の変遷や日本人の海外移住などを取材。著書に、アジア5カ国の日本人キャバクラで9カ月間潜入就職した『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)。X(旧Twitter):https://x.com/ayumikawano/